プリズバインド®静注液2.5g

本剤はダビガトランの抗凝固作用の中和を目的に使用される、ダビガトラン特異的中和剤です。

重要なお知らせ

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禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

製品の主な特徴
製品名 プリズバインド®静注液2.5g
区分 生物由来製品、処方箋医薬品注)
適応症 ダビガトランの抗凝固作用の中和
有効成分 イダルシズマブ(遺伝子組換え)

注)注意-医師等の処方箋により使用すること

製品の基本情報

組成

販売名 プリズバインド静注液2.5g
成分・含量 (1バイアル50mL中)
  有効成分 イダルシズマブ(遺伝子組換え) 2.5g
添加剤 氷酢酸 10.05mg
ポリソルベート20 10.00mg
酢酸ナトリウム水和物 147.35mg
D-ソルビトール 2004.20mg

本剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。

製剤の性状

販売名 プリズバインド静注液2.5g
性状・剤形 無色~微黄色の澄明又はわずかに乳白光を呈する液(水性注射剤)
pH 5.3~5.7
浸透圧比 約1(生理食塩液に対する比)

以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和
○生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時
○重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時

  • 本剤は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の最終投与からの経過時間、患者背景(ダビガトランの薬物動態に影響する可能性がある腎機能及びP-糖タンパク阻害剤の併用等)等から、ダビガトランによる抗凝固作用が発現している期間であることが推定される患者にのみ使用すること。
  • 手術又は処置に対して本剤を使用する場合、ダビガトランによる抗凝固作用の消失を待たずに緊急で行う必要があり、かつ、手技に伴う出血のリスクが高く、止血困難な場合に致死的あるいは重篤な経過になるおそれがある手術又は処置に対してのみ使用すること。
  • 本剤はダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩以外の抗凝固剤による抗凝固作用の中和には使用しないこと。

通常、成人にはイダルシズマブ(遺伝子組換え)として1回5g(1バイアル2.5g/50mLを2バイアル)を点滴静注又は急速静注する。ただし、点滴静注の場合は1バイアルにつき5~10分かけて投与すること。

  • 本剤は、医学的に適切と判断される標準的対症療法の実施とともに使用すること。
  • ダビガトランの抗凝固作用を中和することにより血栓症のリスクが増加するため、止血後は、速やかに適切な抗凝固療法の再開を考慮すること。なお、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の投与は本剤の投与から24時間後に再開可能であり、他の抗凝固剤の投与は本剤投与後いつでも再開可能である。

合併症・既往歴等のある患者

  • 遺伝性フルクトース不耐症の患者
    本剤投与による治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
    本剤は添加物としてソルビトールを含有する。[「その他の注意」の項参照]

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

  • ショック、アナフィラキシー(0.2%):
    ショック、アナフィラキシーを含む過敏症状があらわれることがある。

その他の副作用

  1%未満
血液及びリンパ系障害 血小板減少症
神経系障害 脳血管発作、頭痛
心臓障害 心停止、心房血栓症、徐脈、上室性頻脈
血管障害 深部静脈血栓症、低血圧
呼吸器、胸郭及び縦隔障害 肺塞栓症
胃腸障害 下痢、びらん性胃炎
皮膚及び皮下組織障害 発疹
筋骨格系及び結合組織障害 四肢痛
一般・全身障害及び投与部位の状態 溢出、注入部位疼痛

薬剤投与前の注意

  • 目視による確認を行い、注射液に微粒子又は変色が認められる場合には使用しないこと。
  • 本剤は防腐剤を含有していないため、バイアルは1回限りの使用とし、開封後は速やかに使用すること。

薬剤投与時の注意

  • 本剤を他の薬剤と混合しないこと。
  • 本剤投与時に既存の静脈ラインを使用する場合は、他の薬剤との混合を避けるため、本剤の注入前後にラインを日局生理食塩液でフラッシュすること。
  • 同じ点滴ルートを介して、同時に他の薬剤の投与を行わないこと。

臨床使用に基づく情報

  • 第Ⅰ相試験でイダルシズマブが投与された被験者の8.5%(224例中19例)で、抗イダルシズマブ抗体反応が認められた1)
    国際共同第Ⅲ相試験でイダルシズマブが投与された患者の5.6%(501例中28例)で、抗イダルシズマブ抗体反応が認められた2)
  • 遺伝性フルクトース不耐症の患者に対する本剤の投与経験はないが、当該患者へのソルビトール非経口投与に関連して、低血糖、低リン酸血症、代謝性アシドーシス、尿酸増加、排泄及び合成能の低下に伴う急性肝不全及び死亡が報告されている3),4)。[「特定の背景を有する患者に関する注意」の項参照]

血中濃度

  • 健康被験者
    ダビガトランの定常状態(ダビガトランエテキシラートとして220mgを1日2回投与)にある日本人健康成人男性9例に本剤5gを15分間隔で2回に分けて5分間静脈内投与したときのイダルシズマブの血漿中濃度時間推移及び薬物動態パラメータを以下に示す。イダルシズマブの血漿中濃度は約4時間でCmaxの5%未満に低下した。ダビガトラン非存在下で本剤1~8gを単回投与したとき、AUC0-∞は用量に比例して増加した5)
イダルシズマブの血漿中濃度時間推移及び薬物動態パラメータ

血漿中イダルシズマブ濃度時間推移(算術平均+SD)

イダルシズマブの薬物動態パラメータ

イダルシズマブ5g
(N=9)
幾何平均値(% gCV)a)
AUC0-∞[nmol・h/L] 43300(8.25)
Cmax[nmol/L] 30100(11.5)
t1/2[h] 7.91(9.33)
Vss[L] 6.53(10.2)
CL[mL/min] 40.2(8.25)

a)gCVは幾何変動係数を表す。

  • 母集団薬物動態解析
    母集団薬物動態解析の結果、イダルシズマブの薬物動態は、年齢及び性別による有意な影響を受けなかった6)

特定の背景を有する患者

  • 腎機能障害患者
    411例の患者から得られた結果より、正常の腎機能患者(クレアチニンクリアランス(CrCL)80mL/min以上、CmaxはN=89、AUC0-24はN=76)に比べて、軽度の腎機能障害患者(CrCL 50mL/min以上80mL/min未満)、中等度の腎機能障害患者(CrCL 30mL/min以上50mL/min未満)、高度の腎機能障害患者(CrCL 30mL/min未満)のCmax及びAUC0-24は、それぞれ20%、29%、33%(N=136、109、77)及び38%、90%、146%(N=116、96、59)上昇した2)
  • 肝機能障害患者
    390例の患者から得られた結果より、肝機能正常患者(CmaxはN=322、AUC0-24は=272)に比べて、軽度の肝機能障害患者(ASTあるいはALTの上昇が基準値上限の2倍未満)、中等度の肝機能障害患者(ASTあるいはALTの上昇が基準値上限の2倍以上3倍未満)、高度の肝機能障害患者(ASTあるいはALTの上昇が基準値上限の3倍以上)のCmax及びAUC0-24の変化は、+1%、+4%、-2%(N=40、4、24)及び-3%、+36%、+17%(N=34、3、21)であった7)

有効性及び安全性に関する試験

国際共同第Ⅲ相試験

ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩による治療中の患者で生命を脅かす又は止血困難な出血を発現した患者(グループA)若しくは緊急手術又は処置を要する患者(グループB)を対象として、本剤1バイアルを15分以内の間隔で2回計5gを静脈内投与し、ダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の中和効果及び安全性の検討を目的とした日本人を含む国際共同第Ⅲ相試験では患者503例(うち、日本人12例)を対象とした。主要評価項目として、本剤投与完了後4時間以内のダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の最大の中和効果を、中央検査機関で測定したdTT(希釈トロンビン時間)及びECT(エカリン凝固時間)の値を用い、それぞれの110%基準値上限(ULN)に基づいて評価した。その結果、以下の成績が得られた7)

中央検査機関で測定したdTT及びECTを用いて評価した中和効果の要約

    グループA グループB 合計
dTT 評価対象となった患者数 212 119 331
  本剤投与完了後4時間以内の最大の中和効果の中央値(95%信頼区間) 100
(100,100)
100
(100,100)
100
(100,100)
  最大の中和効果が100%であった患者の割合[N(%)] 209(98.6) 117(98.3) 326(98.5)
ECT 評価対象となった患者数 269 176 445
  本剤投与完了後4時間以内の最大の中和効果の中央値(95%信頼区間) 100
(100,100)
100
(100,100)
100
(100,100)
  最大の中和効果が100%であった患者の割合[N(%)] 257(95.5) 165(93.8) 422(94.8)

中和効果の評価は、イダルシズマブ投与後に1回以上血液凝固検査値が得られ、かつ、投与前の値が110%ULNを超える患者を対象とした。
中和効果は下記の式により算出した。算出した値が100%以上の場合、100%と示した。
中和効果の計算式:{(投与前の血液凝固検査値-投与後の血液凝固検査値)/(投与前の血液凝固検査値-110%ULN)}×100%

日本人患者(12例)のうち、dTT(8例)及びECT(10例)それぞれで評価可能であったすべての患者で最大の中和効果は100%であった。本試験では、ほとんどの患者では、血漿中ダビガトランは本剤投与終了後から持続的に中和されたが、一部の患者では主に本剤投与12時間以上経過後に末梢からのダビガトランの再分布によると考えられる、非結合型総ダビガトラン濃度、血液凝固マーカー値の上昇が認められた。本剤が投与された503例中、副作用が報告された症例は31例(6.2%)であり、2例以上認められた副作用は、低血圧が4例(0.8%)、頭痛、徐脈が各2例(0.4%)であった。

作用機序

イダルシズマブは、ダビガトラン及びそのグルクロン酸抱合代謝物と高い親和性で特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体フラグメント(Fab)であり、ダビガトラン及びそのグルクロン酸抱合代謝物の抗凝固作用を中和する8)In vitro試験により、イダルシズマブとダビガトランが複合体を形成する際の会合速度は速く、解離速度は遅いため、複合体は安定であることが示されている8),9)

イダルシズマブによるダビガトランの中和効果

  • ヒトの治療域を超える血漿中濃度を達成するようダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(経口)及びダビガトラン(静脈内)を投与したブタに鈍的肝外傷を誘起し、外傷性出血に及ぼすダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果について検討したところ、イダルシズマブ注射後5分以内にdTT、ECT及びaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)はベースライン値に戻り、15分以内に止血が誘起された10)
  • ダビガトランの定常状態にある(ダビガトランエテキシラートとして220mgを1日2回投与)日本人健康成人男性9例に本剤5gを15分間隔で2回に分けて5分間静脈内投与したときの血漿中非結合型総ダビガトラン濃度時間推移及び血液凝固マーカー(dTT、ECT及びaPTT)の平均作用-時間推移を以下に示す(各推移の0時間時点はイダルシズマブ又はプラセボの1回目の投与終了に該当)。なお、日本人を対象とした第Ⅰ相試験のベースライン値から算出した「平均値+2×SD」を血液凝固マーカーの基準値上限とした5)
非結合型総ダビガトランの血漿中濃度時間推移

非結合型総ダビガトランの血漿中濃度時間推移(算術平均+SD、総ダビガトランはダビガトランとそのグルクロン酸抱合体の総和を表す)

dTTの平均作用-時間推移

dTTの平均作用-時間推移(算術平均+SD)

ECTの平均作用-時間推移

ECTの平均作用-時間推移(算術平均+SD)

aPTTの平均作用-時間推移

aPTTの平均作用-時間推移(算術平均+SD)

一般的名称:イダルシズマブ(遺伝子組換え)(JAN)
(Idarucizumab(Genetical Recombination))(JAN)

分子量:47,782.03

本質:イダルシズマブは、遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体のFab断片であり、マウス抗ダビガトラン抗体の相補性決定部、並びにヒトIgG1のフレームワーク部及び定常部からなる。イダルシズマブは、225個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)断片及び219個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)から構成されるタンパク質である。

外箱開封後は遮光して保存すること。

  • 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

2バイアル

  1. 社内資料:抗イダルシズマブ抗体の影響(2016年9月28日承認、CTD 2.7.4 4.4.1.6)
  2. Glund S.et al.:J Thromb Haemost.2019;17:1319-1328
  3. Ali M.et al.:J Med Genet.1998;35:353-365
  4. Yasawy MI.et al.:World J Gastroenterol.2009;15(19):2412-13
  5. 社内資料:日本人健康被験者での安全性及び臨床薬理試験(2016年9月28日承認、CTD 2.7.2 2.1.3)
  6. 社内資料:母集団薬物動態/薬力学解析(2016年9月28日承認、CTD 2.7.2 2.2)
  7. 社内資料:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩で治療中の患者を対象とした国際共同第Ⅲ相症例集積試験(1321.3試験)総括報告書
  8. Schiele F.et al.:Blood.2013;121(18):3554-62
  9. 社内資料:薬効薬理試験(ダビガトランとの結合親和性)(2016年9月28日承認、CTD 2.6.2 2.1)
  10. 社内資料:薬効薬理試験(ブタ鈍的肝外傷モデルにおける作用)(2016年9月28日承認、CTD 2.6.2 2.4.2.2)
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