GPP患者さんがつらいと感じる症状や、期待する治療ゴールとは?

サイトへ公開: 2023年06月29日 (木)

鎌田 昌洋 先生

監修:
鎌田 昌洋 先生(帝京大学医学部 皮膚科学講座 准教授)

1.はじめに

膿疱性乾癬(GPP)は、急激な発熱、倦怠感、浮腫といった全身症状とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する全身性炎症疾患です。そのため診療にあたっては皮膚症状だけでなく、全身症状の管理も重要となります1
GPPの臨床プロファイルや治療に伴う経済的負担についてはレセプトベースの研究結果が報告されているものの2-4、患者・医師双方の視点に基づいたGPPの疾病負荷についてはほとんど明らかになっていません。患者・医師双方の視点を理解することは、GPP診療におけるコミュニケーションを改善し、ひいては患者のQOL向上につながると考えられます。
ここでは、そのような背景からGPP患者と皮膚科医を対象に実施されたWebアンケート調査の報告5)より、GPPの症状や治療ゴールに関する項目について紹介します。

2.調査概要5

調査の対象は、皮膚科医によりGPPと診断を受けた18歳以上の患者46例と、日本皮膚科学会承認の生物学的製剤使用認定施設で現在1名以上のGPP患者の診療にあたっている皮膚科医66人で、Webアンケート形式の質問票を用いて実施されました(表1)。
アンケートは、GPPの症状、疾患説明、日常生活、周囲の理解などに関して、患者向け51問、皮膚科医向け44問の構成で実施されました(図1)。

調査概要調査概要02

3.GPPの症状に関する調査結果5

GPPの症状に関し、確定診断時の患者の自覚症状や状態は、膿疱80%、皮膚のただれ61%、皮膚が赤く腫れた状態54%であり、皮膚症状を多く経験していることが示されました(図2)。また、患者が診断時に最もつらかった症状についても、膿疱(33%)や皮疹(28%)など、「皮膚症状」という回答が83%に上っています。一方で、皮膚科医が第一に取り除くべきだと考える症状は、「全身症状」が58%(「発熱や悪寒」52%、「全身の倦怠感」6%)、「皮膚症状」が41%(「膿疱」15%)と皮膚症状を重視しつつも、全身症状により重きを置いていることが明らかとなりました(図3、表2)。

GPPの症状に関する調査結果GPPの症状に関する調査結果02GPPの症状に関する調査結果02

4.GPPの治療ゴールに関する調査結果5

治療ゴールに関して、医師の83%、患者の84%が、皮膚症状が綺麗になること(「完全に綺麗な皮膚」「膿疱・紅斑・鱗屑がほぼない」「膿疱はほぼない」の合算)を重視していることが明らかとなりました(図4)。しかしながら、その内訳をみると、患者が期待する状態として最も多かったのは「完全に綺麗な皮膚」(56%)であるのに対し、医師が目指している状態は「膿疱・紅斑・鱗屑がほぼない状態」(42%)、「完全に綺麗な皮膚」(41%)であり、治療ゴールの認識に若干の違いがあることが示されています。

GPPの治療ゴールに関する調査結果

5. 治療ゴール

治療ゴールについては、近年、医師・患者間の共同意思決定の手法であるShared decision making(SDM)が注目されているように、その認識の共有が不可欠であると考えられています。
SDMは、治療のメリットとリスクを話し合い、患者の価値観や背景を考慮したうえで、共同して治療ゴールに向かっていくためのプロセスであり、患者中心のコミュニケーションスキルとエビデンスに基づく治療の双方が関与することで成立します6)
患者にとって最適な治療を行うために、われわれ医療者には、エビデンスだけを重視することなく、患者と良好なコミュニケーションを取りながら、治療ゴールの認識を共有していく姿勢が求められています。

6. おわりに

GPP患者と皮膚科医を対象に行われたWebアンケート調査から、GPPの急性期症状おける患者の自覚症状・改善を望む症状と、医師が治療すべきと考える症状に若干の違いがみられ、特に患者は皮膚症状の改善を重視していることが明らかになりました。また、GPP診療の治療ゴールとして患者は医師が思う以上に完全に綺麗な皮膚を望んでいることが明らかとなりました。その意味で、膿疱を含む皮膚症状の速やかな改善が期待できる治療薬は、GPP患者のニーズを満たす可能性があります。
GPPの治療にあたって、われわれ皮膚科医はどうしても全身症状の管理に目が行きがちです。しかし、全身症状の管理を行いながらも、患者と十分にコミュニケーションをとって、皮膚症状をコントロールしていくことの重要性を本調査結果は示しています。患者が前向きに治療に取り組むことができるよう、患者と十分にコミュニケーションをとり、患者ニーズを考慮した上で治療ゴールを共有し、治療選択を行っていくことが重要です。

References

  1. 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年版. 日皮会誌. 2015; 125(12): 2211-57.
  2. Morita A, et al. J Dermatol. 2021; 48: 1463-73.
    (本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。)
  3. Okubo Y, et al. J Dermatol. 2021; 48: 1675-87.
    (本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。)
  4. Miyachi H, et al. J Am Acad Dermatol. 2022; 86: 1266-74.
  5. Yagi N, Tada Y, et al. Future Rare Dis. 2023. Epub ahead of print.
    (本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。)
  6. Hoffmann TC, et al. JAMA. 2014; 312: 1295-6.
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