膿疱性乾癬(GPP)患者におけるスペビゴの有効性と炎症マーカーへの影響

サイトへ公開: 2023年09月28日 (木)

佐伯 秀久 先生

監修:
佐伯 秀久 先生
日本医科大学大学院医学研究科 皮膚粘膜病態学分野 教授

◆はじめに

膿疱性乾癬(GPP)は、急激な発熱、倦怠感、浮腫といった全身症状とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する疾患です。血液検査所見では好中球の増多、CRPの上昇、アルブミン値の低下などがみられることが特徴であり、全身性の炎症性疾患ととらえ診療にあたることが重要となります。
本邦では、膿疱性乾癬の急性症状に対する新しい治療薬として、ヒト化抗ヒトIL-36受容体モノクローナル抗体製剤であるスペビゴ®が、2022年9月に承認され、11月に発売されました。ここでは、スぺビゴ®の有効性と安全性を検討したEffisayilTM 1試験と炎症マーカーへの影響を検討した臨床薬理データを紹介します。

◆EffisayilTM 1試験の試験デザイン

EffisayilTM 1試験は、日本を含む世界12ヵ国(37施設)から登録された中等度から重度の急性症状*が認められるGPP患者53例を対象に行われた初めての二重盲検無作為化比較試験です1)2)。患者はスペビゴ®群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割付けられ、スぺビゴ®900 mgを単回静脈内投与されました(図1)。本試験では、乾癬に対する医師による全般的評価(PGA)をGPP評価用に適合した評価尺度であるGPPGA(Generalized Pustular Psoriasis Physician Global Assessment)が用いられ(表1)、主要評価項目として「1週時におけるGPPGA膿疱サブスコア0(肉眼的に膿疱が見えない)達成率」が、重要な副次評価項目として「1週時におけるGPPGA合計スコア0/1(消失またはほぼ消失)達成率」が評価されました。

* EffisayilTM 1試験における中等度から重度のGPP急性症状の定義:
・GPPGA合計スコア3(中等度)以上、および /・新たな膿疱の存在(膿疱の新規形成または増悪)、および /・GPPGA膿疱サブスコア2(軽度)以上、および /・体表面積(BSA)の5%以上に及ぶ紅斑に膿疱を有する

EffisayilTM 1試験における中等度から重度のGPP急性症状の定義:GPPGA合計スコア3(中等度)以上、および /・新たな膿疱の存在(膿疱の新規形成または増悪)、および /・GPPGA膿疱サブスコア2(軽度)以上、および /・体表面積(BSA)の5%以上に及ぶ紅斑に膿疱を有する

◆EffisayilTM 1試験の臨床成績

主要評価項目(1週時のGPPGA膿疱サブスコア0達成率:スペビゴ®群54.3%[19/35例]、プラセボ群5.6%[1/18例])、重要な副次評価項目(1週時のGPPGA合計スコア0/1達成率:スペビゴ®群42.9%[15/35例]、プラセボ群11.1%[2/18例])の検証結果から、プラセボ群に対するスペビゴ®群において1週時における膿疱および皮膚症状の有意な改善が認められました(それぞれ片側p=0.0004、片側p=0.0118、いずれもSuissa-Shuster Z-pooled検定。図2)。

EffisayilTM 1試験の臨床成績

◆EffisayilTM 1試験の安全性

EffisayilTM 1試験では、1週時と12週時に安全性の評価が行われました。
1週時までに、スペビゴ®群12例(34.3%)、プラセボ群6例(33.3%)に副作用が発現しました。主な副作用は、スペビゴ®群では膿疱性乾癬5例(14.3%)、末梢性浮腫2例(5.7%)、プラセボ群では膿疱性乾癬3例(16.7%)、末梢性浮腫1例(5.6%)でした。
1週時までに発現した重篤な有害事象はスペビゴ®群で5例(14.3%)、プラセボ群で3例(16.7%)に認められました。内訳は、スペビゴ®群で膿疱性乾癬4例(11.4%)、好酸球増加および全身症状を伴う薬物反応、尿路感染、薬剤性肝障害および関節炎が各1例(2.9%)、プラセボ群で膿疱性乾癬3例(16.7%)でした。また、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象は報告されませんでした(表2

EffisayilTM 1試験の安全性

◆スぺビゴ®投与による炎症マーカーへの影響

日本皮膚科学会「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」の重症度判定の基準には、皮膚症状のほかに発熱、白血球数、血清CRP値、血清アルブミン値といった全身性炎症に伴う検査所見も含まれます3)
EffisayilTM 1試験のデータを基に、スペビゴ®投与による炎症マーカーへの影響を検討したところ、ベースラインにおいてCRP高値(ULN上限10 mg/Lを超える)の患者では翌日よりCRP値が減少し、投与後2週間以内に基準値を下回りました。また、ベースラインにおいて好中球数高値(ULN上限7.23×109 /Lを超える)の患者でも同様に好中球数が減少し、投与後1週時に基準値を下回りました(図34)

おわりに

◆おわりに

GPPの臨床症状や急性期症状の重症度は多岐にわたりますが、適切な初期治療がなされなかった場合、心不全や腎不全、敗血症などを引き起こし致死的な状態に進行することもあります5)6)。そのため膿胞性乾癬における急性症状の治療においては、膿疱や全身症状を速やかに改善し、かつ忍容性が良好な薬剤が求められています。EffisayilTM 1試験のスペビゴ®群における1週時のGPPGA膿疱サブスコア0達成率は54.3%でした。
今回ご紹介したスぺビゴ®の臨床成績と臨床薬理データを考慮すると、スぺビゴ®は急性症状を有するGPP患者の治療を行う上で有用な選択肢の一つになり得ると考えられます。

References

  1. 社内資料:中等度から重度の急性期症状が認められる膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)患者を対象とした国際共同第II相二重盲検比較試験(EffisayilTM 1試験)(CTD 2.7.6.3.2)[承認時評価資料]
  2. Bachelez H, et al. N Engl J Med. 2021; 385(26): 2431-2440.
    本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。
  3. 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版. 日皮会誌. 2015; 125(12): 2211-2257.
  4. 社内資料:中等度から重度の急性期症状が認められる膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)患者を対象とした国際共同第Ⅱ相二重盲検比較試験(Effisayil-1)薬物動力学の検討(CTD 2.5.3.3)[承認時評価資料]
  5. Navarini AA, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017; 31(11): 1792-1799.
  6. Crowley JJ , et al. Postgrad Med. 2021; 133(3): 330-344.
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