Effisayil-1試験で示されたスペビゴの有効性

サイトへ公開: 2022年09月26日 (月)

大塚 篤司 先生

監修:
大塚 篤司 先生
近畿大学医学部 皮膚科学教室 主任教授

はじめに

膿疱性乾癬(GPP)の急性症状は、急速に広がる疼痛を伴う皮膚症状(無菌性の膿疱など)のほか、さまざまな臓器不全、場合よっては敗血症を引き起こし、生命を脅かす可能性もあるため、患者の生活において大きなリスクとなっています。また、本疾患の患者は膿疱、疼痛、そう痒感に負担を感じているとされています1。したがって、患者にとってのGPPの治療における重要なゴールは、急性症状や膿疱を消失あるいは減少し、疼痛を緩和することであると考えられます1
スペビゴ®はGPPの治療におけるアンメットニーズに応えるべく開発された、新たな治療薬です。

Effisayilᵀᴹ1試験の試験デザイン

スペビゴ®の有効性が検証されたEffisayilᵀᴹ1試験は、GPP患者を対象に行われた初めての二重盲検無作為化比較試験です23。対象は日本人患者2例を含む中等度から重度の急性症状*1が認められるGPP患者53例で、スペビゴ®群とプラセボ群が2:1の割合で割付けられました(図1)。
主要評価項目は1週時におけるGPPGA*2膿疱サブスコア0、重要な副次評価項目は1週時におけるGPPGA合計スコア0/1、階層型の統計学的手順に含まれる副次評価項目は4週時におけるGPPASI 75*3達成率と、疼痛VASスコアのベースラインからの絶対変化量、PSSスコアのベースラインからの絶対変化量、FACIT-Fatigue*4スコアのベースラインからの絶対変化量です。なお、Effisayilᵀᴹ1試験を含むすべてのスペビゴ®の臨床試験で、GPPに特化した重症度評価指標として新たに作成されたGPPGA/GPPASIが用いられています(表1)。

*1 Effisayilᵀᴹ1試験の治験薬投与の選択基準による中等度から重度のGPP急性症状:
・ GPPGA合計スコア3(中等度)以上、および /・ 新たな膿疱の存在(膿疱の新規形成または増悪)、および /・ GPPGA膿疱サブスコア2(軽度)以上、および /・ 体表面積(BSA)の5%以上に及ぶ紅斑に膿疱を有する
*2 GPPGA: 膿疱性乾癬に対する医師による全般的評価(Generalized Pustular Psoriasis Physician Global Assessment)
*3 GPPASI 75: GPPASI(Generalized Pustular Psoriasis Area and Severity Index)は、乾癬の重症度と面積の指標として確立されているPASI(Psoriasis Area and Severity Index)をGPP用に改変したもの。GPPASI病変の状態を0~72でスコア化している。GPPASI 75は、GPPASIスコアがベースラインから75%以上改善したことを表す。
*4 FACIT-Fatigueスコア:慢性疾患患者を対象とした倦怠感を評価する自記式評価尺度

Effisayilᵀᴹ 1試験の試験デザイン01

 

Effisayilᵀᴹ 1試験の試験デザイン02

Effisayilᵀᴹ1試験の臨床成績

主要評価項目(1週時のGPPGA膿疱サブスコア0達成率:スペビゴ®群54.3%[19/35例]、プラセボ群5.6%[1/18例])、重要な副次評価項目(1週時のGPPGA合計スコア0/1達成率:スペビゴ®群42.9%[15/35例]、プラセボ群11.1%[2/18例])の検証結果から、スペビゴ®群において1週時における膿疱および皮膚症状の有意な改善が認められました(それぞれ片側p=0.0004、片側p=0.0118、いずれもSuissa-Shuster Z-pooled検定。図2)。

Effisayilᵀᴹ 1試験の臨床成績01

投与後4週時に行われた副次評価項目は、GPPASI 75達成率と患者報告アウトカム(PRO)である疼痛VASスコア、PSSスコア、FACIT-Fatigueスコアによる評価が行われました。いずれの評価においてもスペビゴ®群はプラセボ群に対する有意な差が認められました(図3)。近年、痛みなどの主観を評価する際には、統計学的検討に加えて、臨床における最小重要差(MCID)*5に達しているかを検討し、より臨床に即した解釈が行われています。
Effisayilᵀᴹ1試験のPSSスコアについてもMCIDを用いた検討が行われ、スペビゴ®群のPSSスコアの絶対変化量は乾癬4を有する患者について報告されているMCIDを上回っており、臨床的に意味のある改善であると考えられました。また、スペビゴ®群における疼痛VASスコア、FACIT-Fatigueスコアの絶対変化量においても、急性疼痛5、および関節リウマチ6を有する患者について報告されているMCIDを上回っていることが確認されました。

*5MCID: Minimal Clinically Important Difference:治療によって有効性が得られたと判断することができる評価尺度の変化量のこと。治療によって得られた変化量がMCIDを上回った場合に、臨床的に意味がある変化であったと判断する。

Effisayilᵀᴹ 1試験の臨床成績02

GPPGA膿疱サブスコア0達成率の12週時までの推移(図4)、主要評価項目についてベースライン時のGPP重症度スコアやIL36RN遺伝子変異の有無などのサブグループ別の解析(図5)なども、評価結果が報告されています。

Effisayilᵀᴹ 1試験の臨床成績03

 

Effisayilᵀᴹ 1試験の臨床成績04

Effisayilᵀᴹ1試験の安全性

Effisayilᵀᴹ 1試験では、1週時と12週時に安全性の評価を行っています。
1週時までに、スペビゴ®群12例(34.3%)、プラセボ群6例(33.3%)に副作用が発現しました。主な副作用は、スペビゴ®群では膿疱性乾癬5例(14.3%)、末梢性浮腫2例(5.7%)、プラセボ群では膿疱性乾癬3例(16.7%)、末梢性浮腫1例(5.6%)でした。
重篤な有害事象はスペビゴ®群で5例(14.3%)、プラセボ群で3例(16.7%)に発現しました。内訳は、スペビゴ®群が膿疱性乾癬4例(11.4%)、好酸球増加および全身症状を伴う薬物反応、尿路感染、薬剤性肝障害および関節炎が各1例(2.9%)、プラセボ群が膿疱性乾癬3例(16.7%)でした。
投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象は報告されませんでした(表2)。

Effisayilᵀᴹ 1試験の安全性01

おわりに

Effisayilᵀᴹ 1試験という、急性症状が認められるGPP患者を対象とした初めてのプラセボ対照二重盲検比較試験が実施されたことは、症状に苦しむ患者の身体的・精神的負担の解消を目指したGPP治療の実現に向けて意義あることだと考えられます。Effisayilᵀᴹ 1試験の結果が、今後のさらなるGPPの病態解明や治療の充実へとつながっていくことを期待したいと思います。

References

  1. 社内資料:患者の経験に関するデータ[承認時評価資料]
  2. 社内資料:中等度から重度の急性期症状が認められる膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)患者を対象とした国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayilᵀᴹ 1試験)(CTD 2.7.6.3.2)[承認時評価資料]
  3. Bachelez H, et al. N Engl J Med. 2021; 385(26): 2431-2440.
    本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。
  4. Rentz AM, et al. J Dermatolog Treat. 2020; 31(5): 460-469.
  5. Lee JS, et al. Acad Emerg Med 2003;10(10): 1128-1130.
  6. Cella D, et al. J Rheumatol 2005; 32(5):811-819.
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