Effisayil-1試験で示されたGPPの急性症状に対するスぺビゴの有効性

サイトへ公開: 2023年05月08日 (月)

大塚 篤司 先生

監修
大塚 篤司 先生
近畿大学医学部 皮膚科学教室 主任教授

はじめに

膿疱性乾癬(GPP)の急性期の症状は、急速に広がる疼痛を伴う皮膚症状(無菌性の膿疱など)のほか、さまざまな臓器不全、場合によっては敗血症を引き起こし、生命を脅かす可能性もあるため、患者の生活において大きなリスクとなっています。そのため、GPPの急性症状に対する治療においては、効果が速やかに発現し、膿疱や全身症状の改善効果が高くかつ忍容性が良好な薬剤が必要とされています。
そのようなアンメットニーズの高いGPPですが、このたび新たな治療薬としてスペビゴ®が加わりました。

Effisayilᵀᴹ1試験のデザイン

スペビゴ®の有効性が検証されたEffisayilᵀᴹ1試験は、GPP患者を対象に行われた初めての二重盲検無作為化比較試験です1)2)。対象は日本人患者2例を含む中等度から重度の急性症状*1が認められるGPP患者53例で、スペビゴ®群とプラセボ群が2:1の割合で割付けられ(図1)、900 mgを単回静脈内投与しました。両群ともGPPが悪化した場合は治験担当医師の選択によるエスケープ治療(標準治療)を実施可とし、エスケープ治療を受けておらず症状が持続する患者(GPPGA*2合計スコア2以上かつGPPGA膿疱サブスコア2以上)には、8日目にスペビゴ®900 mgを非盲検下で救援投与しました。また、8日目以降、急性症状が再燃(臨床的奏効[GPPGA合計スコア0または1]達成後に、GPPGA合計スコア2以上かつGPPGA膿疱サブスコア2以上増加)した場合は、非盲検下でスペビゴ®救援投与を1回のみ実施可としました。
主要評価項目は「1週時におけるGPPGA膿疱サブスコア0(肉眼的に膿疱が見えない)達成率」、重要な副次評価項目は「1週時におけるGPPGA合計スコア0/1(消失またはほぼ消失)達成率」です。なお、Effisayilᵀᴹ1試験を含むすべてのスペビゴ®の臨床試験で、GPPに特化した重症度評価指標として新たに作成されたGPPGA/GPPASIが用いられています(表1)。

*1 Effisayilᵀᴹ1試験における中等度から重度のGPP急性症状の定義:
・ GPPGA合計スコア3(中等度)以上、および /・ 新たな膿疱の存在(膿疱の新規形成または増悪)、および /・ GPPGA膿疱サブスコア2(軽度)以上、および /・ 体表面積(BSA)の5%以上に及ぶ紅斑に膿疱を有する
*2 GPPGA:膿疱性乾癬に対する医師による全般的評価(Generalized Pustular Psoriasis Physician Global Assessment)

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Effisayilᵀᴹ1試験の臨床成績

主要評価項目(1週時のGPPGA膿疱サブスコア0達成率:スペビゴ®群54.3%[19/35例]、プラセボ群5.6%[1/18例])、重要な副次評価項目(1週時のGPPGA合計スコア0/1達成率:スペビゴ®群42.9%[15/35例]、プラセボ群11.1%[2/18例])の検証結果から、スペビゴ®群において1週時における膿疱および皮膚症状の有意な改善が認められました(それぞれ片側p=0.0004、片側p=0.0118、いずれもSuissa-Shuster Z-pooled検定。図2)。
無作為化割り付けしたすべての患者において、エスケープ治療、8日目のスペビゴ®非盲検投与、その後のスペビゴ®救援投与の有無にかかわらず、観察された症例に基づきGPPGA膿疱サブスコア0達成率の推移を検討した結果、スペビゴ®群のGPPGA膿疱サブスコア0達成率は、8日目で61.8%、12週時で84.4%でした(図3)。なお、スペビゴ®群の34.3%(12例)、プラセボ群の83.3%(15例)の患者が8日目のスペビゴ®非盲検投与を受けていました。
スペビゴ®単回投与のみの患者群と単回投与+8日目の非盲検投与を受けた患者群のGPPGA膿疱サブスコアの経時的変化をみると、単回投与のみの患者群では8日目時点で83%、12週時点で65%の患者がGPPGA膿疱サブスコア0を達成しました。単回投与+8日目の非盲検投与を受けた患者群では、2週時点で42%、12週時点で50%の患者がGPPGA膿疱サブスコア0を達成しました(図4)。主要評価項目についてベースライン時の日本皮膚科学会(JDA)のGPP重症度スコアやIL36RN遺伝子変異の有無などのサブグループ別の解析(図5)なども、評価結果が報告されています。

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Effisayilᵀᴹ1試験の安全性

Effisayilᵀᴹ1試験では、1週時と12週時に安全性の評価を行っています。
1週時までに、スペビゴ?群12例(34.3%)、プラセボ群6例(33.3%)に副作用が発現しました。主な副作用は、スペビゴ®群では膿疱性乾癬5例(14.3%)、末梢性浮腫2例(5.7%)、プラセボ群では膿疱性乾癬3例(16.7%)、末梢性浮腫1例(5.6%)でした。
1週時までに発現した重篤な有害事象はスペビゴ®群で5例(14.3%)、プラセボ群で3例(16.7%)に発現しました。内訳は、スペビゴ®群が膿疱性乾癬4例(11.4%)、好酸球増加および全身症状を伴う薬物反応、尿路感染、薬剤性肝障害および関節炎が各1例(2.9%)、プラセボ群が膿疱性乾癬3例(16.7%)でした。
投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象は報告されませんでした(表2)。

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おわりに

Effisayilᵀᴹ1試験で示された有効性と安全性を踏まえると、GPPの主要炎症経路であるIL-36を直接的に遮断するという新しい作用機序を有するスペビゴ®は、GPPの急性症状に対する新しい治療選択肢の1つとなりうる薬剤であると考えられます。GPP患者の負担を軽減するために、先生方のGPP診療においてスペビゴ®を適切に用いていただきたいと思います。

References

  1. 社内資料:中等度から重度の急性期症状が認められる膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)患者を対象とした国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayilᵀᴹ1試験)(CTD 2.7.6.3.2)[承認時評価資料]
  2. Bachelez H, et al. N Engl J Med. 2021; 385(26): 2431-2440.
    本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました。本論文の著者にベーリンガーインゲルハイム社の社員が含まれています。
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