膿疱性乾癬(汎発型)の病態〜尋常性乾癬とどう異なる?

サイトへ公開: 2022年09月29日 (木)

鎌田 昌洋 先生

監修:
鎌田 昌洋 先生
帝京大学医学部 皮膚科学講座 准教授

はじめに

膿疱性乾癬(汎発型、以下GPP)は乾癬の一種に分類されますが、最も一般的な乾癬である尋常性乾癬とは病態が異なる疾患です。ここでは、尋常性乾癬と比較した、GPPの病態について解説します。

尋常性乾癬とGPPの異なる病態について

1) 症状の違い

尋常性乾癬が紅斑、浸潤・肥厚、鱗屑、落屑といった皮膚症状を中心とする疾患である一方、GPPは、急激な発熱とともに全身の皮膚の潮紅、無菌性膿疱の多発という全身性の急性期症状を認めます。病理組織学的にはKogoj海綿状膿疱を特徴とする角層下膿疱を形成します。尋常性乾癬皮疹が先行する例と先行しない例がありますが、再発を繰り返すことが特徴です(表11)。経過中に全身性炎症反応に伴う臨床検査異常を示し、しばしば粘膜症状、関節炎を合併するほか、まれに眼症状、二次性アミロイドーシスを合併することがあります。

尋常性乾癬とGPPの異なる病態について

2) 免疫学的な病態の違い

乾癬における皮膚炎症には、自然免疫と獲得免疫の両方が関与しています。尋常性乾癬はトリガーとして自然免疫を担う細胞から産生されるINF-αやIFN-γなどが関与していますが、病態の維持には獲得免疫の細胞から分泌されるIL-17、IL-23が重要な役割を果たしています。GPPは上記のサイトカインに加えて、好中球、T細胞、樹状細胞、単球などの自然免疫系の細胞を活性化させるIL-36がより強く病態形成に関与していることが示唆されています(図12)-5)。IL-36はIL-1ファミリーに属し、ケラチノサイトを含む様々な細胞で発現しています。ストレス、薬物、外傷、喫煙、病原体などの刺激をトリガーとしてIL-36がケラチノサイトから放出され、IL-36受容体(IL-36R)に結合すると、下流のNF-κB、MAPKなどのシグナル伝達経路が活性化します。

尋常性乾癬とGPPの異なる病態について02

このIL-36Rシグナルは多数の炎症性サイトカインの発現を誘導し、発熱や倦怠感といった全身的な炎症反応を誘発するとともに、好中球をケラチノサイトに浸潤させることでケラチノサイトの増殖と分化、膿疱形成を引き起こします(図2、図32-7)

尋常性乾癬とGPPの異なる病態について03尋常性乾癬とGPPの異なる病態について04

おわりに

GPPの臨床症状や急性期症状の重症度は多岐にわたり(図4、図5、図68)、適切な初期治療がなされなかった場合には、心不全や腎不全、敗血症などを引き起こし致死的になることもあるため、早期診断が重要です。しかしながら、鑑別を要する疾患も多く診断が困難なこともあります。
発熱・倦怠感がある、全身あるいは広い範囲の皮膚に皮疹がある、潮紅皮膚面に多くの膿疱を認める、膿疱が繰り返し現れる、このような患者さんが受診された際にはGPPを疑い、必要に応じてGPP診療実績の豊富な施設にご紹介いただければと思います。

おわりにおわりに02おわりに03

References

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