発熱・膿疱を呈する患者さんの紹介時のポイント

サイトへ公開: 2023年03月30日 (木)

葉山 惟大 先生

監修:
葉山 惟大 先生
日本大学医学部 皮膚科学系皮膚科学分野 助教

はじめに-発熱・膿疱を呈している時点で重症。生検ができる施設に紹介を-

膿疱性乾癬(GPP)は、急激な発熱、倦怠感、浮腫といった全身症状とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する疾患です(図1)。病理組織学的にはKogoj海綿状膿疱を特徴とする角層下膿疱を形成します。GPPの臨床症状や急性期の症状の重症度は多岐にわたりますが、再発を繰り返すことが特徴であり、また、適切な初期治療がなされなかった場合、心不全や腎不全、二次感染に伴う敗血症などを引き起こし致死的な状態に進行することもあります。
GPPの診断にあたっては、一般的な問診により他疾患の可能性を除外していきますが、確定診断には皮膚生検が必要です。上述したように、GPPの急性期の症状は生命に関わる場合もあるため、早期診断・早期治療がとても重要となります。そのため、皮膚生検ができない施設においては、「発熱と膿疱を呈している時点で重症」と考え、躊躇せずに皮膚生検を実施できる施設に紹介していただきたいと思います。
ここでは、そのような発熱・膿疱を呈している患者さんを紹介する際のポイントを解説します。

はじめに-発熱・膿疱を呈している時点で重症。生検ができる施設に紹介を-

紹介前に連絡を

「発熱と膿疱を呈している時点で躊躇せずに紹介を」と述べましたが、コロナ禍の現在、発熱がある場合には、まずは発熱外来を受診していただく必要がある施設もあります。また、急性期の症状を呈するGPPの場合は多くが入院治療となりますので、病室の確保という問題もあります。患者さんを待たせてしまうような事態を可能な限り避けるためにも、紹介前にご連絡をいただけると患者さんをお待たせしてしまうことや他院への転送を避けることができます。

紹介までに確認しておくこと

患者さんの紹介にあたっては図2に示すような内容を聴取していただけると、紹介後の診療がスムーズになります。例えば、高齢の患者さんでは、熱が上がりにくい場合もあるため、発熱・膿疱を繰り返しているかどうかなど経緯を確認していただくなどです。患者さんは来院時に発熱によりぐったりしていることがあります。ご家族が同席している場合はご家族に確認してもいいと思います。また、高齢の患者さんでは「最近あたらしい薬を飲み始めませんでしたか」とお伺いしても処方薬を把握していないことが多いため、そのような場合は「お薬手帳を見せてください」と伝えるようにしています。

紹介までに確認しておくこと

患者さんが通える地域の中核病院に紹介を

GPPは一度の治療で完治するような疾患ではなく、長い期間付き合っていく疾患です。また、急性期の症状を繰り返すことがGPPの特徴であり、再発時においても迅速な治療が重要となります。そのため、紹介にあたっては患者さんが通える範囲の地域の中核病院や、救急の体制が備わった病院に紹介してほしいと思います。GPPは診療ガイドライン1)があり治療法も確立されていますので、患者さんの利便性を重視し「物理的な距離」という基準で紹介先を選択いただければと思います。

おわりに

GPPは医師国家試験にも出題される疾患であり、知識として覚えておられる方も少なくないと思います。しかし、希少疾患であることから、実際の患者さんを前にすぐにGPPとの確信を持つことができるケースは少ないかもしれません。繰り返しとなりますが、発熱と膿疱を呈している患者さんが来院された際には、皮膚生検を実施可能で、患者さんが通える地域の中核病院に迅速に紹介していただきたいと思います。

References

  1. 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年版. 日皮会誌. 2015; 125(12): 2211-2257.
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