GPPの適切な評価指標とは?

サイトへ公開: 2023年06月29日 (木)

森田 明理 先生

監修:森田 明理 先生
名古屋市立大学大学院医学研究科 加齢・環境皮膚科学 教授

はじめに

膿疱性乾癬(GPP)は、急激な発熱、倦怠感、浮腫といった全身症状とともに、全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する疾患です。病理組織学的にはKogoj海綿状膿疱を特徴とする角層下膿疱を形成します。GPPの臨床症状や急性症状の重症度は多岐にわたりますが、再発を繰り返すことが特徴であり、また、適切な初期治療がなされず急性期症状が遷延した場合、心不全や腎不全、敗血症などを引き起こし致死的な状態に進行することもあります。GPPは希少疾患であるがゆえエビデンスが限られている疾患です。このため、ガイドラインやコンセンサスの数は少なく、GPPの治療法開発における比較研究を可能とするためにも、GPPに特化した評価指標の開発が望まれていました。ここでは、これまでGPPの評価に用いられてきた評価指標の課題、および近年開発されたGPPの評価指標であるGPPGA(Generalized Pustular Psoriasis Physician Global Assessment:膿疱性乾癬に対する医師による全般的評価)、およびGPPASI(Generalized Pustular Psoriasis Area and Severity Index:汎発性膿疱性乾癬面積重症度指数)についてご紹介します。

1)これまでGPPの評価に主に用いられてきた評価指標とその課題1)

  • PGA(Physician’s Global Assessment:乾癬に対する医師による全般的評価)
    PGAは診察した医師が感じた全体的な印象で重症度をスコア化するもので、通常は発疹なし(PGA=0)からきわめて高度(PGA=6)までの7段階の尺度が使用されます。乾癬皮疹の形態や体表面積における皮疹の割合(BSA;body surface area)は定量化されません。PGAはスコア化が簡便な反面、皮疹の広がりを評価する指標ではないため、GPPの評価指標としては適切ではありませんでした。
  • PASI(Psoriasis Area and Severity Index:乾癬病変の重症度及び病変面積の評価指標)
    PASIは全身を4領域(頭部、体幹、上肢、下肢)に分け、各領域について、紅斑、肥厚、落屑の程度および病変範囲の程度を点数化する指標です。比較的簡便に使用でき、皮疹の面積と皮疹の症状を総合的に評価できることから、現在最も広く使用されています。前述のPGAとともに欧州医薬品庁(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)は新規乾癬治療法の評価にこのPASIを併用して評価することを推奨しています。しかしながら、PASIでは、 GPPの評価でもっとも重要な膿疱がなく、またPASIのコンポーネントである「肥厚」はGPPに特徴的に認められる症状ではなく、GPPの評価としてはあまり適切ではありませんでした。

2)GPPの評価のために開発されたGPPGA、GPPASI1), 2)

GPPの評価におけるPGAとPASIの適用性を向上させるため、国際的なGPPのエクスパートによる検討が行われました。数百枚に及ぶGPP患者の症例写真を検討し、議論を重ねた結果として開発されたのが、尋常性乾癬の評価における「肥厚」のコンポーネントを、GPPの主な特徴である「膿疱」に置き換えたGPPGAとGPPASIです。EffisayilTM 1試験をはじめとするGPPを対象としたスペビゴ®の臨床試験において、GPPGA/GPPASIは重症度評価の指標として用いられています。

  • GPPGA(表1)
    GPPGAは、PGAをGPP評価用に適合させたものです。すべてのGPP病変の紅斑、膿疱、鱗屑/痂皮を0(消失)~4(重度)で評価し、各サブスコアの平均値からGPPGA合計スコアを決定します。GPPGA合計スコアが低いほど重症度が低いことを意味し、0が消失、1がほぼ消失を示します。EffisayilTM 1試験における主な治験薬投与基準には「GPP合計スコア3(中等度)」、「GPPGA膿疱サブスコア2(軽度)以上」が含まれ、有効性評価(主要評価項目、重要な副次評価項目)もこのGPPGAが用いられています※。
    ※主要評価項目:1週時におけるGPPGA膿疱サブスコア0(肉眼的に膿疱が見えない)達成率
    重要な副次評価項目:1週時におけるGPPGA合計スコア0/1(消失またはほぼ消失)達成率
GPPGA(表1)
  • GPPASI(図1)
    GPPASIは、PASIをGPP評価用に適合させたものです。4つの身体部位(頭部、体幹、上肢及び下肢)における紅斑、膿疱及び鱗屑/痂皮が認められる皮膚の病変面積と重症度を組み合わせて0~72の範囲で評価します。
GPPASI(図1)

おわりに

今回は、新しく開発されたGPPGAとGPPASIについて紹介しました。これらの評価指標の検証を進め、臨床現場におけるGPPに特化した評価指標の使用が普及することで、重症度の正確な判定、それに基づく適切な治療選択がなされることが期待されます。

References

  1. Burden AD, et al. Am J Clin Dermatol. 2022; 23(Suppl 1): 39-50.
    (本論文はベーリンガーインゲルハイム社の支援により執筆されました)
  2. Burden AD, Morita A, et al. Br J Dermatol. 2023. Online ahead of print.
    (本論文はベーリンガーインゲルハイム社の支援により執筆されました)
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