地域連携を見据えたCOPD薬物療法

サイトへ公開: 2022年07月28日 (木)

フロンティアインタビュー 最前線から伝える質の高いCOPD治療実現のためのTips Case06 松阪市民病院 第1回

フロンティアインタビュー 最前線から伝える質の高いCOPD治療実現のためのTips Case06 松阪市民病院 第1回

このコンテンツでは、日頃、多くのCOPD患者さんを診られる専門医の先生に、限られた診療時間の中でより質の高いCOPD治療を実現するためのTipsを伺います。今回から2回にわたり、松阪市民病院の取り組みをご紹介します。今回のテーマは「地域連携を見据えたCOPD薬物療法」です。ぜひご覧ください。

【まとめ】

  • 地域連携を見据えたCOPD薬物療法では、患者さんが治療効果を実感できる吸入薬を選択することが重要
  • 患者さんの症状や重症度に合わせて、初回からLAMA/LABA配合剤を処方
  • かかりつけ医の先生は呼吸機能検査を実施することなく基幹病院に紹介することも可能であり、お戻しした後は定期的なフォローをお願いしたい

松阪市民病院は1946年に開業した、25の診療科と328床の病床を有する地域中核病院です。
同院には2012年に呼吸器センターが開設されており、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、リハビリテーション科、病理科などさまざまな科が協力し呼吸器疾患に対する集中的な治療を実施しながら、地域医療機関との連携にも努めています。
同院では、限られた診療時間の中でより質の高いCOPD治療を実現するため、どのような工夫がなされているのでしょうか。
最前線でCOPD治療に携わっておられる先生に伺いました。

インタビュー:2022年4月20日(水)松阪市民病院で実施

お話を伺った先生

松阪市民病院 院長 兼 呼吸器センター長 畑地 治先生

地域連携を見据えたCOPD薬物療法では、どのようなことを重視して薬剤選択されているのか伺いました。

COPD薬物療法で重視していること

患者さんが治療効果を実感できる吸入薬を選択

畑地先生
患者さんが「治療効果を実感できる」吸入薬を選択することが非常に重要だと考えています。そのためには、「患者さんに使ってもらうこと」、「薬剤が肺の奥まで到達すること」、「患者さんが効果を確認できること」の3つが必要です。
1つ目の「患者さんに使ってもらうこと」とは、使いやすいデバイスを選択するということです。特に巧緻性が低下しているような患者さんには、操作がしやすいデバイスを選択します。
2つ目の「薬剤が肺の奥まで到達すること」とは、そのままの意味です。COPD治療では、肺の奥まで薬剤がしっかり沈着することが重要です。したがって、吸気流速が低下している患者さんでも、吸気努力を必要とせずに、薬剤が肺の奥まで到達しやすいデバイスを選択することが求められます。
3つ目の「患者さんが効果を確認できること」についてのポイントは、吸入薬を開始したあとに、患者さんに動いてもらうことです。動かずにじっとしているだけだと、患者さんは薬剤の効果を実感できませんし、医師も評価ができません。そのため、私は、吸入薬を処方したら、「立つ時間を増やしたり、散歩をしたりしましょう」と、なるべく動くように指導しています。吸入薬の効果がみられた患者さんは、「動いたときの息切れがなくなった」、「農作業が楽になった」と、治療効果について教えてくれます。

COPD薬物療法で重視していること

続いて、COPD薬物療法におけるLAMA/LABA配合剤の位置付けについて伺いました。

LAMA/LABA配合剤の位置付け

LAMA/LABA配合剤はCOPD薬物療法の中心的な存在

畑地先生
LAMA/LABA配合剤は、COPD薬物療法の中心的な存在のひとつと考えています。先ほど申し上げたとおり、COPDの薬物療法では、患者さんが治療効果を実感できる薬剤を選択することが重要です。効果を実感すると、患者さんは続けて使ってくれるからです。LAMA/LABA配合剤は、LAMA単剤またはLABA単剤よりも治療効果を実感していただけるエビデンスがあります。そのため、私は、患者さんの症状や重症度に合わせて、初回からLAMA/LABA配合剤を処方しています。

基幹病院とかかりつけ医の先生とのCOPDの連携について伺いました。

地域連携

win-winな関係を目指した地域連携

畑地先生
呼吸機能検査を実施できるかかりつけ医の先生は、多くはないと思います。そのため、COPDの診断に必要な検査を行えないかかりつけ医の先生は、COPDを疑う患者さんがいらっしゃいましたら、特に検査や確定診断をすることなく、基幹病院に紹介いただいて構わないと考えています。
たとえば、65歳以上で喫煙歴があり、息切れがある患者さんなどでしょうか。そのような患者さんを紹介いただきましたら、当方で診断し、適切な吸入薬を処方し、お戻ししています。かかりつけ医の先生には、その後のフォローをお願いしています。お戻しした患者さんは、1年に1回当院で検査などを実施しているため、逆紹介する際は、1年後の予約を入れてからお戻しし、その旨をかかりつけ医の先生にお伝えするようにしています。このように、地域連携は、win-winな関係を構築することが非常に重要だと考えています。

地域連携
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