スピオルト®レスピマット®28吸入/スピオルト®レスピマット®60吸入

本剤はCOPD(慢性気管支炎、肺気腫)に対し使用される、COPD治療配合剤です。

重要なお知らせ

このページは医療関係者の方向けに使いやすさを配慮した処方に関連する資料です。公式の電子添文が必要な場合には、ページ下部のボタンよりPDF形式でダウンロードしてください。

禁忌(次の患者には投与しないこと)

  • 閉塞隅角緑内障の患者
    [眼内圧を高め、症状を悪化させるおそれがある。]
  • 前立腺肥大等による排尿障害のある患者
    [更に尿を出にくくすることがある。]
  • アトロピン及びその類縁物質あるいは本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
製品の主な特徴
製品名 スピオルト®レスピマット®28吸入/スピオルト®レスピマット® 60吸入
区分 処方箋医薬品注)
適応症 COPD(慢性気管支炎、肺気腫)
有効成分 チオトロピウム臭化物水和物/オロダテロール塩酸塩


注)注意-医師等の処方箋により使用すること

製品の基本情報

販売名 スピオルト
レスピマット28吸入
スピオルト
レスピマット60吸入
成分・含量 1噴霧中チオトロピウム2.5μg(チオトロピウム臭化物水和物として3.124μg)及びオロダテロール2.5μg
(オロダテロール塩酸塩として2.736μg)
添加物 ベンザルコニウム塩化物、エデト酸ナトリウム水和物、精製水、塩酸
内容物 カートリッジの内容物は無色澄明の液である。

慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害 に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)

<効能・効果に関連する使用上の注意>
本剤は慢性閉塞性肺疾患(COPD:慢性気管支炎、肺気腫)の維持療法に用いること。本剤は急性症状の軽減を目的とした薬剤ではない。

通常、成人には1回2吸入(チオトロピウムとして 5μg及びオロダテロールとして 5μg)を1日1回吸入投与する。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤は1日1回、できるだけ同じ時間帯に吸入すること。患者に対し、本剤の過度の使用により不整脈、心停止等の重篤な副作用が発現する危険性があることを理解させ、1日1回を超えて投与しないよう注意を与えること。(「重要な基本的注意」、「過量投与」の項参照)

慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

  • 心不全、心房細動、期外収縮の患者、又はそれらの既往歴のある患者
    [心不全、心房細動、期外収縮が発現することがある。
    (「重大な副作用」の項参照)]
  • 心血管障害(冠不全、不整脈、肥大型閉塞性心筋症)のある患者
    [交感神経刺激作用により症状を悪化させるおそれがある。また、QT延長があらわれるおそれがある。]
  • 高血圧の患者
    [血圧を上昇させるおそれがある。]
  • 腎機能が高度あるいは中等度低下している患者(クレアチニンクリアランス値が50mL/min以下の患者)
    [チオトロピウムは腎排泄型であり、腎機能低下患者で は血中濃度の上昇がみられる。(「薬物動態」の項参照)]
  • 痙攣性疾患のある患者
    [痙攣の症状を悪化させるおそれがある。]
  • 糖尿病の患者
    [高用量のβ2刺激薬を投与すると、血糖値が上昇するおそれがある。]
  • 甲状腺機能亢進症の患者
    [甲状腺機能亢進症の症状を悪化させるおそれがある。]
  • 前立腺肥大のある患者
    [排尿障害が発現するおそれがある。]

重要な基本的注意

  • 本剤はCOPDの急性増悪の治療を目的としていない。COPDに基づく症状を安定させるためには、本剤を継続して投与する必要がある。ただし、用法・用量どおり正しく使用しても効果が認められない場合には、本剤が適当ではないと考えられるので、漫然と投与を継続せず中止すること。
  • 本剤は気管支喘息治療を目的とした薬剤ではないため、気管支喘息治療の目的には使用しないこと。なお、気管支喘息を合併した慢性閉塞性肺疾患患者に投与する場合には、気管支喘息の治療が適切に行われるよう注意すること。
  • 本剤を他の長時間作用性抗コリン薬、長時間作用性β2刺激薬又はこれらを含む配合剤と同時に使用しないこと。本剤の投与中に短時間作用性吸入β2刺激薬を使用する場合は、急性の気管支痙攣等、急性呼吸器症状の緩和のみに使用するよう患者に注意を与えること。(「その他の注意」の項参照)
  • 本剤の吸入後、即時型過敏症(血管浮腫を含む)が発現することがあるので、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 吸入薬の場合、薬剤の吸入により気管支痙攣が誘発される可能性があるので、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 本剤の投与時に、本剤が眼に入らないように患者に注意を与えること。また、結膜の充血及び角膜浮腫に伴う 赤色眼とともに眼痛、眼の不快感、霧視、視覚暈輪あるいは虹輪が発現した場合、急性閉塞隅角緑内障の徴候の 可能性がある。これらの症状が発現した場合には、可及的速やかに医療機関を受診するように患者に注意を与えること。
  • 腎機能が低下している高齢者に対して本剤を投与する場合には、治療上の有益性と危険性を勘案して慎重に投 与し、有害事象の発現に注意すること。(「慎重投与」、「高齢者への投与」、「薬物動態」の項参照)
  • 過度に使用を続けた場合、不整脈、場合により心停止を起こすおそれがあるので、使用が過度にならないよう注意すること。

相互作用

オロダテロールは主にグルクロン酸抱合及びO-脱メチル化により代謝される。

〔併用注意〕(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤
 MAO阻害剤
三環系抗うつ剤等
QT間隔が延長され心室性不整脈等のリスクが増大するおそれがある。 いずれもQT間隔を延長させる可能性がある
交感神経刺激剤 オロダテロールの交感神経刺激作用が増強され、心拍数増加、血圧上昇等がみられるおそれがある。 交感神経刺激剤との併用により、アドレナリン作動性神経刺激が増大する可能性がある。
キサンチン誘導体ステロイド剤 非カリウム保持性利尿剤 低カリウム血症による心血管事象を起こすおそれがあるため、血清カリウム値に注意すること。 キサンチン誘導体はアドレナリン作動性神経刺激を増大させるため、血清カリウム値の低下が増強する可能性がある。
ステロイド剤及びこれらの利尿剤は尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が増強する可能性がある。
β遮断剤 オロダテロールの作用が減弱するおそれがある。やむを得ず併用する場合には、心選択性β遮断剤が望ましいが、注意すること。 β遮断剤との併用により、オロダテロールの作用が拮抗される可能性がある。

副作用

COPD患者を対象として、本剤を52週間投与した第Ⅲ相国際共同試験及び国内長期投与試験にて、1070例(日本人120例を含む)中76例(7. 1%)に副作用が認められ、主な副作用は口渇14例(1. 3%)であった。(承認時)

重大な副作用

  • 心不全、心房細動、期外収縮:心不全(頻度不明注))、心房細動(1%未満)、期外収縮(1%未満)が発現することがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。(「慎重投与」の項参照)
  • イレウス(頻度不明注):イレウスが発現することがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 閉塞隅角緑内障(頻度不明注):閉塞隅角緑内障を誘発することがあるので、視力低下、眼痛、頭痛、眼の充血等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • アナフィラキシー(頻度不明注):アナフィラキシー(蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難等)が発現することがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投 与を中止し、適切な処置を行うこと。

注)チオトロピウム、オロダテロール単剤でのみ認められた事象は頻度不明とした。

その他の副作用

以下のような副作用が現れた場合には、症状に応じて適切な処置を行うこと。

  副作用の頻度
1 %以上注1) 1 %未満注1) 頻度不明注2)
  霧視 眼圧上昇
皮膚   瘙痒、蕁麻疹、脱毛 発疹、皮膚感染、皮膚潰瘍、皮膚乾燥
中枢神経系   浮動性めまい、不眠  
感覚器   味覚倒錯 嗅覚錯誤
消化器 口渇(1.3%) 便秘 消化不良、口内炎、舌炎、嚥下障害、胃食道逆流性疾患、歯肉炎
代謝   高尿酸血症 脱水
循環器   動悸、頻脈、上室性頻 脈、高血圧  
血液     好酸球増多、白血球減少
呼吸器   発声障 害、咳 嗽、鼻出血、咽頭 炎、鼻咽頭 炎、喉頭炎、中咽頭カンジダ 症、咽喉刺激感、呼吸困難 喘鳴、 副鼻腔炎、気管支痙攣
泌尿器   排尿障害、尿閉 血尿、 夜間頻尿、クレアチニン上昇、腎機能異常、尿路感染
筋骨格系   関節痛、背部痛 関節腫脹
一般的全身障害   過敏症(血管浮腫を含む)  

注1)第Ⅲ相国際共同試験及び国内長期投与試験において外国又は国内で認められた事象
注2)チオトロピウム又はオロダテロール単剤でのみ認められた事象は頻度不明とした。

高齢者への投与

一般に高齢者では腎クリアランス等の生理機能が低下しており、血中濃度が上昇するおそれがあるので、副作用の発現に注意すること。(「重要な基本的注意」、「薬物動態」の項参照)

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。高用量オロダテロール(2489μg/kg/日)の妊娠ウサギへの吸入投与により、その胎児に骨格、眼及び心血管の発生異常が報告されている。チオトロピウム及びオロダテロールいずれも、動物実験(ラット)で胎児に移行することが認められている。]
  • 授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には、授乳を中止させること。[チオトロピウム及びオロダテロールいずれも、動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが認められている。]

小児等への投与

低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。[使用経験がない]

過量投与

徴候及び症状:本剤を高用量投与した場合、抗コリン作動薬の徴候及び症状(口渇、動悸、排尿困難等)並びにβ2刺激薬の徴候及び症状(心筋虚血、高血圧、低血圧、頻脈、不整脈、頭痛、振戦、口渇、筋痙攣、悪心、疲労、倦怠、低カリウム血症、高血糖、代謝性アシドーシス等)が発現する可能性がある。

健康成人(海外)にチオトロピウム10、20及び40μgを1日1回、14日間吸入投与したとき、用量依存的に口内、咽喉及び鼻粘膜の乾燥がみられ、40μg群で7日目以降に唾液分泌の顕著な減少がみられた。

健康成人(海外)にオロダテロール(10、20、30、50μg)を単回吸入投与したとき、20μg以上で用量依存的にQT間隔延長がみられた。(「薬物動態」の項参照)

健康成人(海外)にチオトロピウム+オロダテロール5μg/2μg、5μg/10μg、及び10μg/40μg注)を1日1回、14日間吸入投与したとき、検討した最高投与量(10μg/40μg)では、β2刺激薬又は抗コリン薬の薬理学的作用による症状と考えられる有害事象(頭痛、落ち着きのなさ、口内乾燥)が認められた。

注)本剤の承認された用法・用量は、1回2吸入(チオトロピウムとして5μg及びオロダテロールとして5μg)を1日1回投与である。

処置:本剤の投与を中止し、支持療法、対症療法を行うこと。また、症状が重篤な場合には入院させること。心選択性β遮断剤を使用する際は、気管支痙攣を誘発する可能性があるため、使用にあたっては十分に注意すること。

適用上の注意

本剤を患者に交付する際には、正しい使用方法を必ず交付前に説明すること。

その他の注意

本剤と短時間作用型抗コリン性気管支拡張剤(イプラトロピウム臭化物水和物、オキシトロピウム臭化物等)との併用に関しては、臨床試験成績はなく、併用による有効性及び安全性は確立していないことから、併用は推奨できない。

チオトロピウム及びオロダテロール併用投与時の薬物動態

日本人COPD患者を対象に本剤を3週間反復吸入投与したときのチオトロピウム及びオロダテロールの血漿中濃度は約5分、約10分で最高値に達した1)

血漿中濃度推移(算術平均±標準偏差)及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった。

<血漿中濃度推移>

チオトロピウム

血漿中チオトロピウム濃度推移

オロダテロール

血漿中オロダテロール濃度推移

T5/O5配合剤:チオトロピウム 5μg+オロダテロール 5μg配合剤

<薬物動態パラメータ>

反復投与(21日目) チオトロピウム オロダテロール
例数 13 13
パラメータ[単位] gMean(gCV%) gMean(gCV%)
Cmax,ss[pg/mL] 16.5(92.0) 4.33(53.7)
tmax,ss[h]a) 0.100(0.100-0.333) 0.183(0.100-0.333)
AUC0-4h,ss[pg・h/mL]b) 23.3(44.8) 9.94(29.9)
fe0-4,ss[%] 6.72(119) 1.50(100)

a)中央値(範囲)
b)n=12

<チオトロピウムとオロダテロールの相互作用>
COPD患者(海外)に、チオトロピウム5μg及びオロダテロール10μgを1日1回3週間反復吸入投与したとき、チオトロピウム及びオロダテロールとも、単独投与時と比較して顕著な薬物相互作用は認められなかった2)

チオトロピウム及びオロダテロールの単独投与時の薬物動態

吸収

チオトロピウム(吸入液剤)を健康成人(海外)に吸入投与したとき、投与量の33%が全身循環血中に吸収されることが尿中排泄データから示された3, 4)
オロダテロールを健康成人(海外)に吸入投与したときの絶対的バイオアベイラビリティは、約30%と推定された5, 6)

分布

チオトロピウムの血漿蛋白との結合率(in vitro試験)は72%で7)、分布容積は32L/kgであった(海外)4)

オロダテロールの血漿蛋白との結合率(in vitro試験)は約60%で8)、分布容積は1110Lであった(海外)6)

代謝

健康成人(海外)にチオトロピウムを静脈内投与したとき、チオトロピウムの代謝はわずかであった4)。エステル化合物であるチオトロピウム臭化物は、非酵素的にエステル結合が加水分解され、N-メチルスコピン及びジチニールグリコール酸の生成がみられた9)。また、ヒト肝ミクロソーム及びヒト肝細胞を用いた試験でチトクロームP-450によって酸化された代謝物及びそのグルタチオン抱合体がわずかにみられ10, 11)、この代謝はCYP2D6及び3A4の阻害薬により抑制された10)

In vivo試験において、オロダテロールの主な代謝経路は直接的なグルクロン酸抱合化及びメトキシ部分のO-脱メチル化であった12)。オロダテロールのO-脱メチル化には、CYP2C8及びCYP2C9が関与しており13)、オロダテロールのグルクロン酸抱合体生成には、UDPグルクロン酸転移酵素UGT1A1、UGT1A7、UGT1A9及びUGT2B7 が関与していた14)

排泄

健康成人にチオトロピウムを静脈内投与したとき、全身クリアランスは880mL/minで、尿中未変化体排泄率は74%であった4)

健康成人(海外)にオロダテロールを静脈内持続投与したとき、全身クリアランスは872mL/minであった6)

健康成人(海外)に[14C]標識オロダテロールを静脈内投与したとき、投与した放射能の38%が尿中に、53%が糞中に排泄された。静脈内投与時の尿中未変化体排泄率は19%であり、6日以内に投与した放射能の90%以上が排泄された6)

薬物相互作用

オロダテロールとフルコナゾール15)

健康成人(海外)にオロダテロール10μg(吸入投与)とフルコナゾール400mg(経口投与)を1日1回14日間併用したとき、オロダテロールのCmax及びAUCの併用時/非併用時の比(90%信頼区間)は、それぞれ109%(102%~117%)及び113%(106%~121%)であった。オロダテロールとケトコナゾール16)

健康成人(海外)にオロダテロール10μg(吸入投与)とケトコナゾール400mg(経口投与)を1日1回14日間併用したとき、オロダテロールのCmaxが66%、AUCが68%上昇した。

高齢者における薬物動態

高齢者(海外)にチオトロピウム(粉末吸入剤)を吸入投与したとき、チオトロピウムの腎クリアランスは低下した(腎クリアランスは58歳以下のCOPD患者で326mL/min、69歳以上のCOPD患者で163mL/min)が、これは加齢に伴う腎機能の低下によるものと考えられた17)

一方、チオトロピウム(粉末吸入剤)を1日1回反復吸入投与後のAUC0-4h(幾何平均値[範囲])は、非高齢者(海外)では18. 2(10. 0~61. 7)pg・h/mL、高齢者(海外)では26. 1(10. 5~56. 0)pg ・ h/mLで、高齢者で非高齢者に比較して高かったが、個体間変動を考慮すると、血中濃度に加齢による大きな差はないと考えられた17)

腎機能低下患者における薬物動態

軽度の腎機能低下患者(クレアチニンクリアランスが50~80mL/minの患者、海外)では、チオトロピウム4. 8μgを静脈内投与後のAUC0-4hは健康成人(海外)に比較して39%高い値を示した18)。また、高度あるいは中等度の腎機能低下患者(クレアチニンクリアランスが50mL/min未満の患者(海外)では血漿中未変化体濃度は約2倍高い値を示した(AUC0-4hは82%高かった)。

高度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランスが30mL/min未満、海外)では、オロダテロールを単回吸入投与したときのAUC0-4hは健康成人(海外)に比較して約40%増加した19)

肝機能低下患者における薬物動態

オロダテロールのCmax及びAUC(投与量補正値)の肝機能障害患者/健康成人の比(90%信頼区間)は、軽度で112%(84%~151%)及び 97%(75%~125%)、中等度で99%(73%~135%)及び105%(79%~140%)であった(海外)20)

心電図への影響

健康成人(海外)にオロダテロールを単回吸入投与したときの、QTcI間隔(個体ごと補正したQT間隔)のベースラインからの変化量のプラセボとの差の最大値(調整済み平均値[両側90%信頼区 間])は、オロダテロール10、20、30及び50μg投与でそれぞれ2. 1ms[-1. 4、5. 5]、6. 3ms[2. 3、10. 2]、7. 7ms[3. 7、11. 8]、8. 6ms[4. 7、12. 6]であった21)。日本人COPD患者に本剤を 3 週間投与したときのベースラインからのQTcF間隔の変化量の平均値は-7. 6(投与 15分前)~ -2. 3ms(投与後 1 時間)であった1)

国際共同第Ⅲ相試験成績22, 23, 24)

COPD患者5162名(日本人413名を含む)を対象とした、実薬対照、 ランダム化二重盲検並行群間比較試験(同じデザインで実施した2試験:TONADO 1及びTONADO 2)で、本剤をCOPD患者1024名(日本人78名を含む)に1日1回52週間吸入投与した。本剤は投与5分で肺機能(FEV1)の改善がみられ、投与24週後のFEV1AUC0-3h及びトラフFEV1並びにSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)による生活の質(QOL)は単剤(チオトロピウム 5μg及びオロダテロール 5μg)に対して、統計学的に有意な差が示された。また、日本人集団でも同様の結果が得られた。

投与24週後のFEV1AUC0-3h(L)

  TONADO1 TONADO2
本剤 チオトロピウム オロダテロール 本剤 チオトロピウム オロダテロール
全体集団
ベースライン 1.110±
0.462
(522)
1. 148±
0. 491
(526)
1. 159±
0. 519
(525)
1. 154±
0. 516
(502)
1. 146±
0. 499
(500)
1. 173±
0. 490
(507)
投与 24週後 1. 363±
0. 517
(498)
1. 298±
0. 527
(489)
1. 314±
0. 575
(475)
1. 413±
0. 569
(455)
1. 307±
0. 555
(460)
1. 325±
0. 527
(452)
変化量 0. 258±
0. 211
(498)
0. 140±
0. 188
(489)
0. 138±
0. 207
(475)
0. 271±
0. 240
(455)
0. 166±
0. 222
(460)
0. 139±
0. 210
(452)
本剤との群間差
[95%信 頼区間]a)、p値a)
  0. 117
[0. 094, 0. 140] p<0. 0001
0. 123
[0. 100, 0. 146] p<0. 0001
  0. 103
[0. 078, 0. 127] p<0. 0001
0. 132
[0. 108, 0. 157] p<0. 0001
日本人部分集団
ベースライン 0. 989±
0. 394
(45)
1. 070±
0. 432
(38)
1. 094±
0. 486
(53)
1. 185±
0. 588
(34)
1. 146±
0. 507
(37)
1. 207±
0. 418
(54)
投与 24週後 1. 307±
0. 458
(42)
1. 194±
0. 440
(38)
1. 290±
0. 545
(48)
1. 414±
0. 530
(30)
1. 361±
0. 550
(36)
1. 369±
0. 394
(49)
変化量 0. 315±
0. 169
(42)
0. 125±
0. 134
(38)
0. 158±
0. 273
(48)
0. 279±
0. 203
(30)
0. 201±
0. 145
(36)
0. 138±
0. 209
(49)
本剤との群間差
[95%信頼区間]a)
  0. 184
[0. 112, 0. 256]
0. 155
[0. 087, 0. 222]
  0. 078
[0. 006, 0. 150]
0. 143
[0. 076, 0. 211]

平均値±標準偏差(例数)

a)投与群、投与日、投与群と投与日の交互作用、ベースライン値、ベースライン値と投与日の交互作用を固定効果、被験者を変量効果とし、被験者内でspatial power共分散構造を仮定した反復測定混合モデル(MMRM)

投与24週後のトラフFEV1( L)

  TONADO 1 TONADO 2
本剤 チオトロピウム オロダテロール 本剤 チオトロピウム オロダテロール
全体集団
ベースライン 1. 110±
0. 462
(522)
1. 148±
0. 491
(526)
1. 159±
0. 519
(525)
1. 154±
0. 516
(502)
1. 146±
0. 499
(500)
1. 173±
0. 490
(507)
投与24週後 1. 223±
0. 491
(498)
1. 210±
0. 500
(489)
1. 212±
0. 541
(476)
1. 265±
0. 530
(455)
1. 213±
0. 526
(460)
1. 219±
0. 505
(452)
変化量 0. 118±
0. 183
(498)
0. 052±
0. 176
(489)
0. 035±
0. 180
(476)
0. 123±
0. 213
(455)
0. 073±
0. 199
(460)
0. 033±
0. 196
(452)
本剤との群間差
[95%信頼区間]a)
p値a)
  0. 071
[0. 047, 0. 094] p<0.0001
0. 082
[0. 059, 0. 106] p<0. 0001
  0. 050
[0. 024, 0. 075] p=0. 0001
0. 088
[0. 063, 0. 113] p<0.0001
日本人部分集団
ベースライン 0. 989±
0. 394
(45)
1. 070±
0. 432
(38)
1. 094±
0. 486
(53)
1. 185±
0. 588
(34)
1. 146±
0. 507
(37)
1. 207±
0. 418
(54)
投与24週後 1. 199±
0. 438
(42)
1. 125±
0. 434
(38)
1. 214±
0. 524
(48)
1. 311±
0. 507
(30)
1. 290±
0. 555
(36)
1. 286±
0. 390
(49)
変化量 0. 207±
0. 147
(42)
0. 055±
0. 143
(38)
0. 083±
0. 240
(48)
0. 176±
0. 161
(30)
0. 129±
0. 145
(36)
0. 055±
0. 203
(49)
本剤との群間差
[95%信頼区間]a)
  0. 152
[0. 085, 0. 218]
0. 134
[0. 072, 0. 196]
  0. 059
[-0. 014, 0. 131]
0. 124
[0. 056, 0. 192]

平均値±標準偏差(例数)

a)投与群、投与日、投与群と投与日の交互作用、ベースライン値、ベースライン値と投与日の交互作用を固定効果、被験者を変量効果とし、被験者内でspatial power共分散構造を仮定した反復測定混合モデル(MMRM)

生活の質(QOL)に関する成績(併合データ[TONADO 1+2])

投与24週でのSGRQ総スコアは、本剤はベースラインから6. 8改善(減少)し、本剤とオロダテロール 5μgの差は-1. 693(p=0. 0022)、本剤とチオトロピウム 5μgの差は-1. 233(p=0. 0252)で、本剤は各単剤と比較して統計学的に有意に優れていた。本剤のレスポンダー割合注)は57. 5%で、オロダテロール 5μg(44. 8%、オッズ比1. 6703、[p<0. 0001])及びチオトロピウム 5μg(48. 7 %、オッズ比1. 4261[p=0. 0001])と比較して統計学的に有意に優れていた。

注)投与24週のSGRQ総スコアがベースラインと比較して臨床的に意味のある最小の差である 4 以上の改善があった患者の割合

国内及び国際共同第Ⅲ相臨床試験成績(長期投与成績)22, 23, 25)

国内で実施した臨床試験及び国際共同試験(TONADO 1+2)試験に参加した日本人患者(本剤投与120名)で、投与52週時のベースラインからの変化量は、FEV1AUC0-3hで0.247L、トラフFEV1で0.148Lであり、日本人患者集団における52週までの効果の継続が確認された

チオトロピウム

チオトロピウムは長時間持続型の選択的ムスカリン受容体拮抗薬であり、ムスカリン受容体のサブタイプであるM1~M5受容体にほぼ同程度の親和性を示す26)。気道においては、気道平滑筋のM3受容体に対するアセチルコリンの結合を阻害して気管支収縮抑制作用を発現する。非臨床試験(摘出標本及び生体位)において示された気管支収縮抑制作用は用量依存的であり、この作用は24時間以上持続する27, 28)。摘出標本を用いた検討により、気管支収縮に対する抑制作用(M3受容体拮抗作用)はアセチルコリン遊離増強作用(M2受容体拮抗作用)に比べ持続することが明らかとなっている。

オロダテロール29)

オロダテロールは長時間持続型ヒトβ2受容体刺激薬であり、in vitro試験において、オロダテロールはhβ1-AR及びhβ3-ARと比較するとhβ2-ARに対して241倍及び2299倍の刺激作用を示した。吸入による局所投与後、オロダテロールはhβ2-ARを活性化することで細胞内のアデニル酸シクラーゼを活性化し、環状アデノシン一リン酸(cAMP)の生成を促し、気管支平滑筋を弛緩させる。モルモット及びイヌのアセチルコリン誘発性気管支収縮モデルにおいて、オロダテロールは用量に依存した気管支収縮抑制作用を示し、その作用は24時間持続した

一般名:チオトロピウム臭化物水和物(Tiotropium Bromide Hydrate)

化学名:(1α, 2β, 4β, 5α, 7β)-7-[(Hydroxydi-2-thienylacetyl)oxy]-9, 9-dimethyl-3-oxa-9-azoniatricyclo[3. 3. 1. 02,4]nonane bromide monohydrate

化学構造式:

化学構造式

分子式:C19H22BrNO4S2・H2O

分子量:490.43

性 状: 白色~帯黄白色の粉末である。水にやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくい。

一般名:オロダテロール塩酸塩(Olodaterol Hydrochloride)

化学名: 6-Hydroxy-8-((1R)-1-hydroxy-2-{[2-(4-methoxyphenyl)-1,1-dimethylethyl]amino}ethyl)-2H-1,4-benzoxazin-3(4H)-one monohydrochloride

化学構造式:

化学構造式

分子式:C21H26N2O5・HCl

分子量:422. 90

性 状:白色の粉末である。メタノール及びN, N-ジメチルホルムアミドに溶けやすく、水にやや溶けやすく、エタノール(99. 5)にやや溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。

  • 患者には専用の吸入用器具レスピマット®及び使用説明書を渡し、使用方法を指導すること。
  • 本剤は冷凍しないこと。
  • 地方自治体により定められた廃棄処理方法に従うこと。

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

スピオルト®レスピマット®28吸入:
吸入用器具レスピマット® 1 個及びカートリッジ 1 本
(0. 5mL:28噴霧[14回投与分])

スピオルト®レスピマット®60吸入:
吸入用器具レスピマット® 1 個及びカートリッジ 1 本
( 1 mL:60噴霧[30回投与分])

  1. 社内資料:日本人COPD患者を対象とした3週間投与薬物動態試験、滝沢綾子ほか [1237.24]
  2. 社内資料:COPD患者を対象とした3週間投与DDI試験 [1237.3]
  3. 社内資料:健康成人での反復投与薬物動態試験 [205.112]
  4. 社内資料:健康成人でのバイオアベイラビリティ試験 [205.105]
  5. 社内資料:健康被験者を対象とした用量漸増単回吸入投与試験[1222.1]
  6. 社内資料:健康被験者を対象とした静脈内及び経口投与によるヒトADME試験 [1222.9]
  7. 社内資料:チオトロピウムの薬物動態試験(分布:血漿蛋白結合)[B1279]
  8. 社内資料:オロダテロールの薬物動態試験(分布:血漿蛋白結合)[8222052]
  9. 社内資料:チオトロピウムの薬物動態試験(代謝:血漿中加水分解)[B1013]
  10. 社内資料:チオトロピウムの薬物動態試験(代謝:肝ミクロソーム)[B1014]
  11. 社内資料:チオトロピウムの薬物動態試験(代謝:肝細胞)[B1153]
  12. 社内資料:オロダテロールの薬物動態試験(代謝:ヒトにおける代謝) [B3697]
  13. 社内資料:オロダテロールの薬物動態試験(代謝:チトクロームP450及び肝細胞) [B2647]
  14. 社内資料:オロダテロールの薬物動態試験(代謝:in vitro phase Ⅱ酵素) [B3951]
  15. 社内資料:フルコナゾールとの薬物相互作用試験 [1222.48]
  16. 社内資料:ケトコナゾールとの薬物相互作用試験 [1222.47]
  17. 社内資料:高齢者における薬物動態試験 [205.133]
  18. Tuerck D,et al.:J Clin Pharmacol 44(2),163,2004
  19. 社内資料:腎機能障害患者を対象とした試験 [1222.35]
  20. 社内資料:肝機能障害患者を対象とした試験 [1222.20]
  21. 社内資料:オロダテロールのTQT試験 [1222.8]
  22. 社内資料:COPD患者を対象とした52週間投与第Ⅲ相国際共同試験(TONADO 1) [1237.5]
  23. 社内資料:COPD患者を対象とした52週間投与第Ⅲ相国際共同試験(TONADO 2) [1237.6]
  24. 社内資料:COPD患者を対象とした52週間投与第Ⅲ相国際共同試験の併合解析 [1237.9991]
  25. 社内資料:日本人COPD患者を対象とした52週間投与第Ⅲ相試験、滝沢綾子ほか [1237.22]
  26. Disse B,et al.:Life Sci 64(6/7),457,1999
  27. Disse B,et al.:Life Sci 52(5/6),537,1993
  28. 大村剛史ほか:医学と薬学 51(5),711,2004
  29. Bouyssou T,et al.:J Pharmacol Exp Ther 334(1),53,2010
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