多職種連携による豊富な経験の共有 鼎談 山田 英恵 先生 × 杉山 紘一 先生 × 戸辺 幸江 先生

サイトへ公開: 2020年10月06日 (火)

開催年月日:2020年2月10日 開催地:PREMIER VILLA(茨城県ひたちなか市)

COPDの薬物治療の第一選択薬は吸入薬ですが、さまざまな吸入デバイスがあり、それぞれに応じた吸入指導が大きな鍵を握ります。多職種連携による吸入指導を考えるシリーズの第二回目では、ひたちなか総合病院で吸入指導に関わる先生方に、それぞれが果たす役割や吸入指導の工夫やコツなどを解説いただきました。

鼎談 山田 英恵 先生 × 杉山 紘一 先生 × 戸辺 幸江 先生

山田 英恵 先生 x 杉山 紘一 先生 x 戸辺 幸江 先生01

茨城県全体へのネットワーク展開を
目指して。

山田 英恵 先生
(株)日立製作所 ひたちなか総合病院
呼吸器内科 主任医長
×
杉山 紘一 先生
(株)日立製作所 ひたちなか総合病院 薬務局 薬剤師
×
戸辺 幸江 先生
(株)日立製作所 ひたちなか総合病院 看護局 看護師

ー院内の吸入指導において、医師、薬剤師、看護師が連携するメリットを聞かせてください。
山田先生 : 吸入指導は医師だけでできるものではありません。当院では薬剤師と看護師の協力を得て多職種での吸入指導が可能になりました。初回と5回目の指導を薬剤師が、その間に看護師が指導、確認するという明確なプロトコルが決められて共有されていることがポイントで、特に看護師に入ってもらうメリットは大きいです。患者さんの日常生活を考慮するなど医師や薬剤師と異なる視点で患者さんを診てもらうというプロセスは、吸入指導において重要な位置を占めています。

杉山先生 : 吸入指導のプレーヤーが多いと、情報量が増えるというメリットがあります。医師、薬剤師、看護師のそれぞれの見方や考え方が重要な情報として共有できます。薬剤師による最初の吸入指導で患者さんがきちんと吸うことができても、翌日にはできなくなるというケースもあるので、そのような場合には、翌日どうだったか、その後はどうなったかを看護師がフォローしてくれることで情報が補完されます。判断に必要な情報が得られるので、大いに助かっています。

また、多職種連携がうまく機能することによって、質問や相談がすぐできるというメリットもあります。例えば医師に「先生、この場合はどうしますか」と質問したり、看護師に「この部分を重点的にフォローしてくれませんか」と相談もできます。

戸辺先生 : 多くの人が参加することで、多方面から情報が得られることが1番のメリットです。自分1人だと偏った見方になってしまいがちですが、疑問があった場合に医師や薬剤師にすぐ相談できる体制が整っているのは大きいと感じています。例えば、患者さんがどうしても吸入できない場合、薬剤師に相談して補助具を提案してもらうことなども可能です。

ー吸入指導ネットワークの取り組み、今後の展開について教えていただけますか。
杉山先生 : われわれは地域の調剤薬局と残薬調整などさまざまな取り組みを行っており、その取り組みを伝えるためのホームページを作成中です。今回、診療報酬改定で新設された吸入薬指導加算の情報もぜひ掲載したいと考えています。また、ひたちなか薬剤師会向けに作っている吸入指導マニュアルや指導手順表もアップして、多くの薬剤師に使ってもらえる環境にしたいと思っています。

山田先生 : 吸入薬指導加算は、多職種連携による吸入指導の土台形成につながっていくはずです。その流れをわれわれも後押しできるよう、吸入指導ネットワークの拡大などの活動を続けていきたいと思います。

ーどのような場面で仕事のやりがいを感じられますか。具体例があれば併せてご教示ください。
山田先生 : 薬剤師や看護師の吸入指導の結果、患者さんが治療に積極的になったり、症状がコントロールできるようになったと聞いたときに、吸入指導ネットワークをここまで大きくしてよかったと思います。

杉山先生 : 誤操作のため、うまく吸入できなかった患者さんが徐々に上達し、退院していく姿を見るときにやりがいを感じます。最近では、呼吸器内科に加え、他科の病棟でも吸入指導を行っていますが、呼吸器内科での経験を活かすことができ、他科でも貢献できるのは嬉しいです。

戸辺先生 : いろいろな状況や理由から、吸入しなかったり、またはできなかったりする患者さんがたくさんいます。吸入指導の結果、自分で吸入できるようになっていく姿を見るとやりがいを感じます。

ー最後に、COPD治療における今後の展望やチャレンジを、それぞれお聞かせください。
山田先生 : 高齢化が進む日本では、COPDは重要な疾患となっています。最近では治療薬の選択肢が増え、COPD治療の新時代に入った感があります。患者さんの症状を改善し、死亡率の低減に寄与するために、諦めない治療の選択肢を提示することが求められます。教育者としては今後、次世代を担う若い医師に、COPDはコントロールできる疾患であることを伝えていきたいと思います。また研究者としては、COPDを遺伝子レベルで解明する基礎研究を臨床につなげ、両分野に貢献していきたいと思っています。基礎と臨床は両輪であり、両方が合わさって初めて説得力があると思っています。

杉山先生 : ひたちなか吸入指導ネットワークの取り組みや仕組みをさまざまな地域で使っていただける形にすることを今年の目標とし、多くの方にわれわれの取り組みの意義や重要性を伝えることができれば嬉しいです。

戸辺先生 : 最近、禁煙指導について勉強しています。吸入指導を受けている患者さんの中には喫煙を続けている人がかなりいますが、すぐやめるのはなかなか難しいのが現状です。患者さんを見かけるたびに声をかけ、喫煙の状況を聞いています。吸入指導だけでなく、喫煙の状況や食生活、運動を含めた包括的な生活指導ができるように、日々勉強して向上していきたいと思います。

山田 英恵 先生 x 杉山 紘一 先生 x 戸辺 幸江 先生02
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