多職種連携による豊富な経験の共有 インタビュー 山田 英恵 先生

サイトへ公開: 2020年10月07日 (水)

開催年月日:2020年2月10日 開催地:PREMIER VILLA(茨城県ひたちなか市)

COPDの薬物治療の第一選択薬は吸入薬ですが、さまざまな吸入デバイスがあり、それぞれに応じた吸入指導が大きな鍵を握ります。多職種連携による吸入指導を考えるシリーズの第二回目では、ひたちなか総合病院で吸入指導に関わる先

インタビュー 山田 英恵 先生

インタビュー 山田 英恵 先生

医師、薬剤師、看護師の連携で
多面的な指導を実現。

山田 英恵 先生
(株)日立製作所 ひたちなか総合病院
呼吸器内科 主任医長

ー 最初に、ひたちなか総合病院における吸入指導の取り組みをご説明いただけますか。

ひたちなか総合病院では2017年に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療における吸入指導チームを院内で立ち上げました。その際、薬剤師の杉山紘一先生や看護師の戸辺幸江先生に参加していただき、医師、薬剤師、看護師の多職種連携による吸入指導のプロトコルを作成、運用を開始しました。
具体的には、指導手順表と確認チェック表(○△×の3段階評価)でスコア化するとともに、チェック表の確認項目を電子カルテに入力するためのテンプレートを作成し、チェック表を電子カルテ上で確認、共有できる仕組みになっています。この仕組みによって、多職種間での吸入指導と評価の標準化が可能になりました。

ー 院内での吸入指導のフローと特徴を教えてください。

医師が処方する薬剤を決定した後、薬剤師と看護師が合計5回の吸入指導と評価を行います。初回は薬剤師が吸入器の使い方の指導と評価を行います。その後、2~4回目は看護師が、薬剤師が行った吸入指導の再確認や服薬継続の有無の確認、患者さんの症状のチェックなどを実施。5回目に薬剤師が再指導と評価を行います(図)。
このフローの特徴は、看護師による3回の吸入指導と評価です。薬剤師による初回の指導と再指導の間に看護師による3回の確認や服薬管理が加わることで、手厚い指導が可能となっています。

ー 看護師が吸入指導に参加するメリットをお聞かせください。

看護師が医師や薬剤師とは異なった視点で指導してくれる点です。例えば、「薬剤師の指導が患者さんに正確に伝わっているか」「患者さんが正しく吸入できているか」といった患者目線で確認してくれます。また、患者さんが吸入するタイミングは、医師や薬剤師が不在の早朝や夜間が多いため、その時間帯に指導や服薬管理してくれることで吸入指導がよりスムーズになるといったメリットがあります。さらに、患者さんの生活や家庭環境を把握しているため、服薬をサポートしてくれる家族や親戚の有無などの情報を医師や薬剤師に提供できる、などが挙げられます。このように、薬剤のエキスパートである薬剤師に看護師が加わることで、多面的な指導が実現できるのです。

ー 医師、薬剤師、看護師による多職種連携が、院内での吸入指導チームを支えているということですね。

その通りです。初回と5回目が薬剤師、その間に看護師が参加するというプロトコルがきちんと決められて、院内で共有されていることが重要です。このしっかりした基盤があるからこそ、吸入指導のフローとして機能するのです。
私は薬剤師と看護師が吸入指導の真の主人公であり、吸入指導チームを前へ引っ張っていってもらいたいと思います。COPDの吸入指導の理想の姿とは、医師、薬剤師、看護師など多職種連携による吸入指導や評価が当たり前になった状態だと考えています。多職種が参加する多面的な体制で、常に患者さんにベストの吸入指導ができる。そんな時代が来ることを切に願います。

ムを支えているということですね

ー 院内での吸入指導チーム立ち上げの2年後には院外でひたちなか吸入指導ネットワークを開始されていますが、立ち上げまでの経緯をお聞かせください。

院内で吸入指導チームを立ち上げる際、杉山先生や戸辺先生をはじめ院内の薬剤師や看護師が大変協力的で、共同で準備を進めた結果、比較的、短期間でチームができました。吸入薬の決定など吸入指導の入り口の部分は医師が担当しますが、その後の実際の指導や評価は薬剤師や看護師が中心になって進みますので、その主要メンバーと協力して体制を構築できたことは非常に心強かったです。
その後、院内の取り組みが軌道に乗ってきたのを受け、この取り組みを院外に広げるため、杉山先生に地域の調剤薬局との交渉を進めていただきました。地域の調剤薬局での試験的運用などを経て、2019年にひたちなか吸入指導ネットワークを立ち上げることができました。

ー ひたちなか吸入指導ネットワークの目標やゴールを教えていただけますか。

現在、茨城県内にひたちなか吸入指導ネットワークのような取り組みをしているところは他にありませんので、将来的には、このネットワークをひたちなか市だけでなく、茨城県全体に広げたいと思っています。県全体に展開することで、茨城県のCOPDの患者さんがネットワークの恩恵を受けられるようになるのが、われわれのゴールです。

ルを教えていただけますか

資料:(株)日立製作所 ひたちなか総合病院 山田英恵先生ご提供

ページトップ