安全性併合解析から見るトラディアンス配合錠の臨床使用

サイトへ公開: 2021年05月31日 (月)

2用量あるトラディアンス配合錠

図1

2用量ある トラディアンス配合錠

トラディアンス配合錠は、DPP-4阻害薬トラゼンタ(リナグリプチン)とSGLT2阻害薬ジャディアンス(エンパグリフロジン)との配合剤です。トラゼンタ、ジャディアンス単剤服用で血糖コントロール不十分な患者さん、あるいはトラゼンタ、ジャディアンス両剤服用で血糖コントロールが安定している患者さんは、トラディアンス配合錠への切り替えが可能です。また、トラディアンス配合錠はクラス内で唯一APとBPの2用量があり、患者さんの血糖コントロール状態に合わせて1日1 回1錠の同じ用法で増量が可能です。
今回は、トラディアンス配合錠の臨床試験を用いた安全性併合解析の結果を中心にご紹介します。また、適正使用のための患者さんへのアドバイスについてもご紹介します。

安全性併合解析概要

図2

安全性併合解析概要01

はじめに、トラディアンス配合錠の安全性および忍容性を、ジャディアンス単剤またはトラゼンタ単剤と比較検討した安全性併合解析についてご紹介します。本解析の対象は、未治療あるいは血糖降下剤の治療下で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者です。5つの臨床試験(試験期間は24週から52週)被験者のうち、無作為化され試験薬の投与を受けた患者について、有害事象などを併合解析しました。重要な安全性検討事項として、低血糖、尿路感染、性器感染、下肢切断、体液量減少、過敏症、膵炎、腎機能低下、肝障害、皮膚病変、糖尿病性ケトアシドーシスが設定されました。

図3

安全性併合解析概要02

患者の年齢の平均値は56.0~56.5歳、HbA1cは8.06~8.08%でした。人種別ではアジア人が29.3~37.4%含まれました。

図4

安全性併合解析概要03

また、BMIの平均値は29.42~29.92kg/m² 、eGFRの平均値は92.04~92.34mL/min/1.73m²の範囲でした。

有害事象①

図5

有害事象①01

有害事象は、トラディアンス配合錠群908例(64.4%)、ジャディアンス群689例(67.9%)、トラゼンタ群333例(70.9%)でした。主な有害事象は、上咽頭炎がそれぞれ135例(9.6%)、95例(9.4%)、62例(13.2%)、尿路感染が89例(6.3%)、68例(6.7%)、35例(7.4%)でした。重篤な有害事象はそれぞれ59例(4.2%)、56例 (5.5%)、21例(4.5%)、死亡例は3例(0.2%)、4例(0.4%)、0例(0%)でした。

有害事象②

図6

有害事象②01

有害事象のうち、重要な安全性検討事項として設定された事象について詳しくご紹介します。低血糖は、トラディアンス配合錠群11例(0.8%)、ジャディアンス群16例(1.6%)、トラゼンタ群6例(1.3%)、そのうち重篤なものは、それぞれ1例(0.1%)、1例(0.1%)、 0例(0%)でした。尿路感染はそれぞれ131例(9.3%)、96例(9.5%)、51例(10.9%)、性器感染は43例(3.0%)、52例(5.1%)、9例(1.9%)、下肢切断は0例(0%)、2例(0.2%)、0例(0%)でした。

図7

有害事象②02

体液量減少はそれぞれ10例(0.7%)、5例(0.5%)、5例 (1.1%)でした。また、体液量減少は、ベースラインで利尿薬使用があった患者では3例(1.4%)、4例(2.2%)、2例(2.4%)、利尿薬使用がなかった患者では7例(0.6%)、1例(0.1%)、3例(0.8%)にみられました。年齢別にみると、50歳未満では1例(0.3%)、0例(0%)、1例(0.8%)、50歳以上 65歳未満では5例(0.7%)、2例(0.4%)、2例(0.8%)、65歳以上では4例(1.3%)、3例(1.6%)、2例(1.9%)にみられました。

図8

有害事象②03

膵炎はそれぞれ2例(0.1%)、0例(0%)、1例(0.2%)、腎機能低下は 3例(0.2%)、2例(0.2%)、2例(0.4%)、肝障害は15例(1.1%)、11例(1.1%)、8例(1.7%)、皮膚病変は1例(0.1%)、0例(0%)、0例(0%)、糖尿病性ケトアシドーシスはいずれの群も 0 例(0%)でした。

併合解析の結果は以上のとおりです。これを踏まえ、ここからはトラディアンス配合錠の一成分であるSGLT2阻害薬の適正使用のための患者さんへのアドバイスについてご紹介します。

適正使用①脱水予防

図9

適正使用①脱水予防01

はじめに、脱水予防についてです。SGLT2阻害薬投与による循環血漿量に与える影響を考慮すると、過度な飲水は尿 量増加の原因となります。特にSGLT2阻害薬投与初期は尿量増加が報告されていますので、患者さんに十分な飲水をお伝えすることが必要です。投与初期にみられた尿量増加は、持続的にはみられませんので、投与継続期は喉が渇いたら水分を摂るようお伝えください。なお、高齢者に対しては、SGLT2阻害薬投与に関わらず、普段からこまめに水分を摂るようお伝えください。

適正使用②感染

図10

適正使用②感染01

続いて、感染症についてです。ジャディアンスの成分であるエンパグリフロジンの尿中グルコース排泄作用により、尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会 陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがあります。特に女性は元々、尿路・性 器感染にかかりやすいため注意が必要です。日ごろからトイレを我慢しない、陰部を清潔にする、十分な水分摂取などを心がけるようお伝えください。また、異常に気づいたら医師に相談すること、特に局所の熱感や疼痛、皮膚に黒色変化がみられる場合は直ちに受診するようお伝えください。

適正使用③シックデイ

図11

適正使用③シックデイ01

最後に、シックデイについてです。トラディアンス配合錠の服用中にシックデイとなった患者さんは、主治医に連絡して指示を受けるようお伝えください。また、必要に応じて食事を工夫していただき、食事がとれないときは原則としてトラディアンス配合錠の服用を中止し、主治医に相談するようにお伝えください。

今回ご紹介した内容を、糖尿病治療におけるトラディアンス配合錠の適正使用にお役立ていただければ幸いです。

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