糖尿病の治療強化に次なる一歩を

サイトへ公開: 2021年12月16日 (木)
B+用サムネイル_①トラディアンス配合錠の有効性と安全性、副作用対策

2型糖尿病のある方のなかには、高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病を併発していて治療中の方も多いため、服薬実施率を意識した治療が重要であると考えられます。糖尿病治療において、服薬の負担軽減を考慮して単剤併用から配合剤への切り替えを検討するケースもあると思います。そこで今回は、配合剤による治療の有用性や安全性として、トラディアンス配合錠に関するエビデンスを紹介いたします。

図1

配合錠の有用性とトラディアンス配合錠

糖尿病のある方の服薬薬剤数を調べた我が国の調査では、糖尿病患のある方の86.9%が2種類以上の薬剤を服用していたことが示されました。
こうした実情のなかで、患者さんの服薬負担を軽減するために有用な選択肢のひとつが、配合錠です。

図2

こちらは配合錠による治療をした際と、単剤を2剤併用で投与した際の血糖マネジメントと服薬アドヒアランスを比較したメタ解析の結果です。服薬アドヒアランスの改善とHbA1c低下において配合錠による治療の優位性が示唆されました。

図3

トラディアンス配合錠は、SGLT2阻害薬であるジャディアンスとDPP-4阻害薬であるトラゼンタの配合剤です。クラス内で唯一2つの用量規格を持ち、患者さんの血糖マネジメント状態に合わせて1日1回1錠の用法を変えることなく治療強化が可能となります。

DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤として(2024年4月現在)

配合錠の有用性とトラディアンス配合錠03

糖尿病のある方の状況によっては、単剤を併用するよりも、配合錠による治療の方が有用であるケースがあることを紹介いたしました。
ここからは、トラディアンス配合錠の有効性と安全性のエビデンスを紹介するとともに、配合錠の副作用に対する患者さんへの説明に関して解説いたします。

図4

リナグリプチンからの切替試験(国内第Ⅲ相試験)

トラディアンス配合錠による血糖低下作用のエビデンスを紹介します。本試験では、トラゼンタ5mg単剤で血糖マネジメント不十分な日本人2型糖尿病のある方を対象に、トラディアンス配合錠AP(エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mg)を24週間1日1回経口投与したときの有効性および安全性をトラゼンタ5mg投与と比較検討しました。

図5

主要評価項目である投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの調整平均変化量は、トラゼンタ5mg+プラセボ群の+0.21%と比較して、トラディアンス配合錠AP群では-0.93%と有意な低下が認められ、その差は1.14%でした。
トラゼンタ錠から、ジャディアンス錠を上乗せしたトラディアンス配合錠APへの切り替えにより、優れたHbA1c低下作用効果が検証されました。

図6

本試験の52週間投与における副作用発現割合は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群で20.3%(37/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与全投与群で7.5%(7/93例)でした。
主な副作用は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群では血中ケトン体増加4.4%(8/182例)でした。
投与中止に至った副作用として、トラディアンス配合錠AP群では発疹および頻尿いずれも0.5%(1/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与群では低血糖1.1%(1/93例)が認められました。
重篤な副作用として、トラディアンス配合錠BP群で2例(副腎新生物、および肺の悪性新生物)、およびトラディアンス配合錠AP群で1例(脳出血)が認められ、このうちトラディアンス配合錠AP群で発現した脳出血の重症度は高度で、死亡に至りました。

図7

トラディアンス配合錠の安全性併合解析

トラディアンス配合錠の安全性および忍容性を、ジャディアンス単剤またはトラゼンタ単剤と比較検討した安全性併合解析について紹介します。
本解析の対象は、未治療あるいは血糖降下剤の治療下で血糖マネジメント不十分な2型糖尿病患者です。5つの臨床試験(試験期間は24週から52週)被験者のうち、無作為化され試験薬の投与を受けた患者について、有害事象などを併合解析しました。重要な安全性検討事項として、低血糖、尿路感染、性器感染、下肢切断、体液量減少、過敏症、膵炎、腎機能低下、肝障害、皮膚病変、糖尿病性ケトアシドーシスが設定されました。

図8

有害事象は、トラディアンス配合錠群908例(64.4%)、ジャディアンス群689例(67.9%)、トラゼンタ群333例(70.9%)でした。主な有害事象は、上咽頭炎がそれぞれ135 例(9.6%)、95例(9.4%)、62例(13.2%)、尿路感染が89例(6.3%)、68例(6.7%)、35例(7.4%)でした。重篤な有害事象はそれぞれ59例(4.2%)、56例(5.5%)、21例(4.5%)、死亡例は3例(0.2%)、4例(0.4%)、0例(0%)でした。なお、投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象、有害事象による死亡の内訳については論文に記載はありませんでした。

図9

有害事象のうち、重要な安全性検討事項として設定された事象について紹介します。
低血糖は、トラディアンス配合錠群11例(0.8%)、ジャディアンス群16例(1.6%)、トラゼンタ群6例(1.3%)、そのうち重篤なものは、それぞれ1例(0.1%)、1例(0.1%)、0例(0%)でした。尿路感染はそれぞれ131例(9.3%)、96例(9.5%)、51例(10.9%)、性器感染は43例(3.0%)、52例(5.1%)、9例(1.9%)、下肢切断は0例(0%)、2例(0.2%)、0例(0%)でした。
体液量減少はそれぞれ10例(0.7%)、5例(0.5%)、5例(1.1%)でした。また、体液量減少は、ベースラインで利尿薬使用があった患者では3例(1.4%)、4例(2.2%)、2例(2.4%)、利尿薬使用がなかった患者では7例(0.6%)、1例(0.1%)、3例(0.8%)にみられました。年齢別にみると、50歳未満では1例(0.3%)、0例(0%)、1例(0.8%)、50歳以上65歳未満では5例(0.7%)、2例(0.4%)、2例(0.8%)、65歳以上では4例(1.3%)、3例(1.6%)、2例(1.9%)にみられました。
膵炎はそれぞれ2例(0.1%)、0例(0%)、1例(0.2%)、腎機能低下は3例(0.2%)、2例(0.2%)、2例(0.4%)、肝障害は15例(1.1%)、11例(1.1%)、8例(1.7%)、皮膚病変は1例(0.1%)、0例(0%)、0例(0%)、糖尿病性ケトアシドーシスはいずれの群も0例(0%)でした。

図10

尿路感染及び性器感染に対する患者指導

トラディアンス配合錠による治療を行う上で、注目すべき有害事象として、尿路感染と性器感染が挙げられます。
尿路感染および性器感染に関しては、患者さんへの注意喚起とともに、異常に気付いたらすぐに相談するよう患者さんをご指導ください。

患者さんへのご指導にあたっては、トラディアンス配合錠では、尿路・性器感染の症状や日常生活で気を付けるポイント等を紹介した患者さん指導用下敷きや患者指導箋、患者冊子を用意しています。患者指導の際に、是非ご活用下さい。

まとめ

2型糖尿病においては単剤を併用するよりも配合剤への切り替えが有用なケースも多いと考えられます。
患者さんの服薬負担や服薬実施率を考慮した治療強化に、有効性と安全性のエビデンスを有するトラディアンス配合錠をぜひご検討ください。

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