下野先生に聞きました SGLT2阻害薬の患者アドバイス実践Q&A 服薬実施率編
第5回 服薬実施率編
Q:![第5回 アドヒアランス編](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_1.png)
患者さんにきちんと薬物治療を継続していただくためには、
どのようなことに注意すればいいでしょうか?
A:
糖尿病診療ガイドライン2019において、『薬剤数あるいは内服回数の増加によりアドヒアランスが低下することが問題である。最近では、様々な配合錠が上市されており、それらの使用によりアドヒアランスの向上や経済的負担の軽減につながることが期待できる』1)と記載されており、服薬実施率に配慮した治療法を選択することが重要だと考えます。
解説
![解説](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_2.png)
服薬実施率の観点から、錠剤の大きさや形、用法・用量を考え、できるだけ服薬における患者さんの負荷を減らしたいと考えています。
たとえばジャディアンスは10mgと25mgのふたつの規格が用意されており、1日1回1錠でふたつの用量に対応します。さらに、トラゼンタとの配合剤であるトラディアンス配合錠も同じく1日1回1錠でステップアップが可能で、トラディアンス配合錠にはAPとBPのふたつの規格があります。
この用量が全ての患者さんに必要とは限りませんが、患者さんと治療方針を相談する上では、選択肢があると助かるケースが多いです。
![いです](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_3.png)
1) 糖尿病診療ガイドライン 2019 , P69-91
試験概要
トラディアンスの国内第Ⅲ相臨床試験をご紹介します。本試験では、トラゼンタ5mg単剤で血糖コントロール不十分な日本人2型糖尿病患者さんを対象に、トラディアンス配合錠APを24週間1日1回経口投与したときの有効性および安全性をトラゼンタ5mg投与と比較検討しました。
![試験概要](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_4.png)
有効性
その結果、主要評価項目である投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの変化量は、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与群の+0.21%と比較して、トラディアンス配合錠AP群では-0.93%と有意な低下が検証され、その差は1.14%でした。
このように、トラゼンタ錠から、ジャディアンス錠を上乗せしたトラディアンス配合錠APへの切り替えにより、優れたHbA1c低下効果が示されました。
![れました](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_5.png)
さらに、本試験ではトラディアンス配合錠AP投与24週後に血糖コントロールが不十分な患者さんに対して、28週目にトラディアンス配合錠BPへ増量し、計52週間投与によるHbA1c低下効果を検討しました。
その結果、 投与開始時から投与52週目までのHbA1cはご覧のように推移し、トラディアンス配合錠BPへ増量した群の投与52週後のHbA1cのベースラインからの変化量は-1.10%でした。
このように、トラディアンス配合錠APからBPへの切り替えにより、HbA1cが低下することが示されました。
![れました](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_6.png)
安全性
本試験の52週間投与における副作用発現割合は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群で20.3%(37/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与全投与群で7.5%(7/93例)でした。主な副作用は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群では血中ケトン体増加4.4%(8/182例)でした。投与中止に至った副作用として、トラディアンス配合錠AP群では発疹および頻尿いずれも0.5%(1/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ追加投与群では低血糖1.1%(1/93例)が認められました。重篤な副作用として、トラディアンス配合錠BP群で2例(副腎新生物、および肺の悪性新生物)、およびトラディアンス配合錠AP群で1例(脳出血)が認められ、このうちトラディアンス配合錠AP群で発現した脳出血の重症度は高度で、死亡に至りました。
![安全性](/jp/sites/default/files/inline-images/TRD_003_7.png)
治療継続性を考慮した2型糖尿病治療にジャディアンス、トラディアンス配合錠をぜひご活用ください。