トラゼンタからの切替検証試験 臨床成績(1275.19試験)

サイトへ公開: 2021年01月30日 (土)

試験デザイン

トラゼンタ(リナグリプチン)からの切替試験 [1]

1275.19試験:リナグリプチンからの切替試験。トラゼンタ(リナグリプチン)で血糖コントロールが不十分な日本人患者での有効性及び安全性(国内第Ⅲ相比較・検証試験)

日本人の2型糖尿病患者で、経口血糖降下薬による治療を受けていない患者、もしくはトラゼンタ(リナグリプチン)以外の経口血糖降下薬1剤により治療中の患者(ウォッシュアウト実施)にトラゼンタ5mgを16週間投与し(オープンラベル安定期)、HbA1cが7.5%以上の血糖コントロール不十分な患者を対象としました。スクリーニング時点でトラゼンタによる治療を16週間以上受けており、選択基準に合致した患者は、プラセボ導入期から参加可能としました。

2週間のプラセボ導入期後、対象をトラディアンス配合錠AP(エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mg)群もしくはトラゼンタ5mg+プラセボ群に2:1の比で無作為に割付け、二重盲検下にて24週間経口投与したときのトラディアンス配合錠APの有効性と安全性を、トラゼンタ5mg+プラセボと比較検討しました。

投与24週後のHbA1cが7.0%以上で血糖コントロールが不十分な場合には、28週目以降はトラディアンス配合錠BP(エンパグリフロジン25mg/リナグリプチン5mg)群又はトラゼンタ5mg+プラセボ[増量]群に増量して、さらに24週間投与したときの有効性と安全性を評価しました。投与24週後のHbA1cが7.0%未満の場合には、投与28週目以降も用量を維持して24週間投与しました。(計52週間)

試験デザイン01

Reference

[1] 須崎恵子ほか:社内資料 国内第III相検証・比較試験(承認時評価資料)

試験概要

目的: トラゼンタ5mg単剤による治療で血糖コントロール不十分な日本人2型糖尿病患者を対象とし、トラディアンス配合錠APを24週間1日1回経口投与したときの有効性及び安全性をトラゼンタ5mg投与と比較検討する。さらに、投与24週後の血糖コントロールが不十分な患者については、トラディアンス配合錠BPに増量して24週間延長投与(合計52週間投与)したときの有効性及び安全性を比較検討する。
対象: トラゼンタ5mg1日1回少なくとも16週間の投与後も血糖コントロール不十分な日本人2型糖尿病患者275例
方法: ランダム化、二重盲検、ダブルダミー、プラセボ対照、並行群間比較試験
評価項目: [主要評価項目]
  • 投与24週後のHbA1cのベースラインからの変化量
[副次評価項目]
  • 投与52週後のHbA1cのベースラインからの変化量 等
[その他の有効性評価項目]
  • 投与24週後及び投与52週後の空腹時血糖値のベースラインからの変化量
  • 投与24週後及び投与52週後の体重のベースラインからの変化量
  • 投与52週後の血圧(拡張期及び収縮期血圧)のベースラインからの変化量 等
[安全性評価項目]
  • 有害事象、低血糖事象、特に注目すべき有害事象、心血管イベント、臨床検査値、脈拍数
解析計画: 主要評価項目の主解析は二重盲検治療期間の投与24週後のHbA1cのベースラインからの変化量を比較する制限付き最尤法による混合効果モデル反復測定(MMRM)法を用いて、群間比較を行った。この統計モデルには薬剤、ベースラインの腎機能、来院及び来院と薬剤の交互作用、及び糖尿病治療薬の前投与を固定効果、ベースラインHbA1cを線形共変量として含めた。副次評価項目、その他の有効性評価項目の解析に関してもMMRM法を用いて群間比較を行った。

有効性

投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの変化量(主要評価項目)

トラディアンス配合錠AP群:-0.93%
トラゼンタ5mg+プラセボ群:+0.21%

トラディアンス配合錠AP群のトラゼンタ5mg+プラセボ群に対する差は-1.14%で、HbA1cの有意な低下が検証されました(p<0.0001、MMRM)。

【トラディアンス配合錠AP群とトラゼンタ5mg+プラセボ群の比較】

HbA1cのベースラインからの変化量(投与24週後)

HbA1cのベースラインからの変化量(投与24週後)

調整平均変化量の差(95%CI):–1.14%(–1.36, –0.91)

:p<0.0001 (vs. トラゼンタ5mg+プラセボ群)

FAS:最大の解析対象集団、OC:欠測値を他の値で補うことなく実測値のみを用いて解析、MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1cを含めた。)

投与52週後におけるHbA1cのベースラインからの変化量(副次評価項目)

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群:-1.16%
トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群:+0.06%

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群のトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群に対する差は-1.22%で、HbA1cの有意な低下が認められました(p<0.0001、MMRM)。

【トラディアンス配合錠AP・BP全投与群とトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群の比較】

52週間投与におけるHbA1cの推移

52週間投与におけるHbA1cの推移

HbA1cのベースラインからの変化量(投与52週後)

HbA1cのベースラインからの変化量(投与52週後)

調整平均変化量の差(95%CI):–1.22%(–1.45, –0.99)

:p<0.0001 (vs. トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群)

FAS:最大の解析対象集団、OC:欠測値を他の値で補うことなく実測値のみを用いて解析、MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1cを含めた。)

HbA1cのベースラインからの推移及び変化量

投与52週後(トラディアンス配合錠BP群、副次評価項目)

トラディアンス配合錠BP群:-1.10%

トラゼンタ5mg+プラセボ群[増量]:+0.11%

投与52週後におけるトラディアンス配合錠BPへの切替(28週時)直前からのHbA1cの調整平均変化量は、-0.21%でした。

【トラディアンス配合錠BP群とトラゼンタ5mg+プラセボ群[増量]の比較】

52週間投与におけるHbA1cの推移

52週間投与におけるHbA1cの推移

HbA1cのベースラインからの変化量(投与52週後)

HbA1cのベースラインからの変化量(投与52週後)

FASUT-I(FAS up titration-Ⅰ):増量群が最大の解析対象集団、OC:欠測値を他の値で補うことなく実測値のみを用いて解析、MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1cを含めた。)

その他の有効性評価項目

投与52週後における空腹時血糖値のベースラインからの変化量

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群:-38.48mg/dL

トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群:+1.63mg/dL

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群のトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群に対する差は-40.11mg/dLで、有意な低下が認められました(p<0.0001、MMRM)。

【トラディアンス配合錠AP・BP全投与群とトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群の比較】

52週間投与における空腹時血糖値の推移

52週間投与における空腹時血糖値の推移

空腹時血糖値のベースラインからの変化量(投与52週後)

空腹時血糖値のベースラインからの変化量(投与52週後)

調整平均変化量の差(95%CI):–40.11mg/dL(–46.98, –33.25)

:p<0.0001 (vs. トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群)

FAS:最大の解析対象集団、OC:欠測値を他の値で補うことなく実測値のみを用いて解析、MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、 糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1c及びベースライン空腹時血糖値を含めた。)

投与52週後における体重のベースラインからの変化量(参考情報)

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群:-2.66 kg

トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群:-1.13 kg

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群のトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群に対する差は-1.53 kgでした。

【トラディアンス配合錠AP・BP全投与群とトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群の比較】

52週間投与における体重の推移

52週間投与における体重の推移

体重のベースラインからの変化量(投与52週後)

体重のベースラインからの変化量(投与52週後)

調整平均変化量の差(95%CI):–1.53kg(–2.19, –0.87)

:p<0.0001 (vs. トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群)

FAS:最大の解析対象集団、OC:欠測値を他の値で補うことなく実測値のみを用いて解析、MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1c及びベースライン体重を含めた。)

投与52週後における収縮期及び拡張期血圧のベースラインからの変化量

収縮期血圧

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群:-5.0mmHg

トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群:-1.2mmHg

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群のトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群に対する差は-3.8mmHgでした。

拡張期血圧

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群:-3.0mmHg

トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群:-1.3mmHg

トラディアンス配合錠AP・BP全投与群のトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群に対する差は-1.8mmHgでした。

参考情報

【トラディアンス配合錠AP・BP全投与群とトラゼンタ5mg+プラセボ全投与群の比較】

収縮期血圧変化量

収縮期血圧変化量

調整平均変化量の差(95%CI):–3.8mmHg(–7.2, –0.4) *:p=0.0280(vs. トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群)

拡張期血圧変化量

拡張期血圧変化量

調整平均変化量の差(95%CI):–1.8mmHg(–3.9, 0.3) †:p=0.0986(vs. トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群)

FAS:最大の解析対象集団、OC:欠測値を他の値で補うことなく実測値のみを用いて解析、[収縮期血圧変化量]MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1c及びベースライン収縮期血圧を含めた。) [拡張期血圧変化量]、MMRM:混合効果モデル反復測定(固定効果として薬剤、ベースラインeGFR、糖尿病治療薬の前投与、来院及び来院と薬剤の交互作用を、線形共変量としてベースラインHbA1c及びベースライン拡張期血圧を含めた。)

安全性

24週間投与における副作用発現割合は、トラディアンス配合錠AP群で15.4%(28/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ群で3.2%(3/93例)でした。主な副作用としてトラディアンス配合錠AP群で2例以上報告された副作用は、血中ケトン体増加3.8%(7/182例)、無症候性細菌尿、便秘、口渇及び頻尿いずれも1.6%(3/182例)、外陰腟真菌感染、発疹及び低血糖いずれも1.1%(2/182例)でした。投与中止に至った副作用として、トラディアンス配合錠AP群では発疹及び頻尿いずれも0.5%(1/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ群では低血糖1.1%(1/93例)が認められました。重篤な副作用は認められませんでした。

増量期における副作用発現割合は、トラディアンス配合錠BP群で10.3%(13/126例)、トラディアンス配合錠AP群で3.9%(2/51例)、トラゼンタ5mg+プラセボ群[増量]で5.0%(4/80例)で、トラゼンタ5mg+プラセボ群での発現はありませんでした。主な副作用としてトラディアンス配合錠BP群で2例以上報告された副作用は、無症候性細菌尿3.2%(4/126例)、膀胱炎2.4%(3/126例)でした。投与中止に至った副作用は報告されませんでした。重篤な副作用として、トラディアンス配合錠BP群で2例(副腎新生物、及び肺の悪性新生物)、及びトラディアンス配合錠AP群で1例(脳出血)が認められました。このうちトラディアンス配合錠AP群で発現した脳出血の重症度は高度で、死亡に至りました。死亡例に関しては、28週目の診察予定日に患者が来院せず、約1週間後に試験担当医が患者に連絡をしたところ、当該診察予定日の11日前に自宅にて往診医によって死亡が確認され、死因は脳出血と診断されたと判明しました。ただし、剖検は実施されておらず、画像データ等もないため、詳細は不明です。

52週間投与における副作用発現割合は、トラディアンス配合錠AP・BP全投与群で20.3%(37/182例)、トラゼンタ5mg+プラセボ全投与群で7.5%(7/93例)でした。主な副作用としてトラディアンス配合錠AP・BP全投与群で2例以上報告された副作用は、血中ケトン体増加4.4%(8/182例)、無症候性細菌尿3.3%(6/182例)、膀胱炎及び頻尿いずれも2.2%(4/182例)、口渇及び便秘いずれも1.6%(3/182例)、発疹、外陰腟真菌感染、外陰腟そう痒症及び低血糖いずれも1.1%(2/182例)でした。

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