門脇 孝先生に問う 2型糖尿病の今とシンプルなトラゼンタ

サイトへ公開: 2022年10月27日 (木)

「早期からの継続的な糖尿病治療の重要性と薬剤選択 ~CAROLINA試験を踏まえて~」
ご監修・出演:門脇 孝先生(虎の門病院 院長)

ご監修・出演:門脇 孝先生(虎の門病院 院長)

糖尿病治療の目標は、糖尿病のない人と変わらない寿命と日常生活の質(QOL)の実現を目指すことです。そのためには、血糖コントロールをはじめ体重や血圧などを良好に保つことにより、合併症の発症・進展を予防することが重要です。

合併症予防のためには早期から治療を開始し、継続することが重要です。そのためには多様な治療選択肢の中からどの薬剤を選択するべきでしょうか。そこで本日は、虎の門病院の門脇 孝先生に、早期からの継続的な糖尿病治療と薬剤選択について、DPP-4阻害薬トラゼンタのエビデンスとともにお伺いします。

「早期からの継続的な糖尿病治療の重要性と薬剤選択 ~CAROLINA試験を踏まえて~」

早期からの治療継続の重要性
Q 早期に治療を開始し、継続することの重要性について教えてください。

糖尿病診療ガイドライン2019では、「血糖コントロールの目標は、可能な限り正常な代謝状態を目指すべきであり、治療開始後早期に良好な血糖コントロールを達成し、その状態を維持することができれば、長期予後の改善が期待できる」1とし、早期から治療を開始し、継続することの重要性が記載されています。
私が主任研究者を務めているJ-DOIT3の研究では、45~69歳の2型糖尿病患者さんにおいて、血糖・血圧・脂質に対する強化治療を行うことで、イベント発生が抑制される可能性が示されています。

早期からの治療継続の重要性

その2型糖尿病治療の選択肢のひとつとして、インクレチン関連薬があります。2型糖尿病の自然歴をみると、糖尿病発症時にはβ細胞機能はすでに低下していると考えられています。同様にインクレチン作用も低下しています。そのため、インクレチン作用を補完あるいは是正することで血糖マネジメントの改善が期待できると考えられます2

早期からの治療継続の重要性02

トラゼンタデータ①
Q インクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬について教えてください。

2009年に発売されたDPP-4阻害薬は、近年の糖尿病治療に貢献してきた薬剤クラスのひとつです。
日本では多くのDPP-4阻害薬が使用可能となっていますが、それぞれ異なる構造式を有し、異なる特徴を有しています。
例えば、排泄経路にも違いがあり、トラゼンタは胆汁排泄型のDPP-4阻害薬であるため、腎機能の程度によらず1日1回5mgの投与量でシンプルに処方が可能です。

Q インクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬について教えてください

トラゼンタデータ②
Q トラゼンタの安全性・有効性について、データをご紹介いただけますでしょうか。

こちらは、日本人2型糖尿病患者さんを対象に、トラゼンタを初めて単独療法として服用した際の、長期安全性および有効性を調査した観察研究のデータです。観察期間は3年あるいは薬剤中止までの期間でした。

Q トラゼンタの安全性・有効性について、データをご紹介いただけますでしょうか。

まず安全性について、トラゼンタ投与による副作用発現率を説明します。
副作用は安全性解析対象症例2,235例中240例(10.7%)に認められました。
副作用の集計はMedDRAの基本語を用いて行われましたが、その基本語により分類された副作用で5例以上に認められた主な副作用は、糖尿病35例(1.6%)、コントロール不良の糖尿病13例(0.6%)を含む糖尿病の悪化、便秘21例(0.9%)、高血圧13例(0.6%)などでした。
副作用による投与中止症例は74例に認められ、主な投与中止に至った副作用は、糖尿病5例、便秘・浮動性めまい・肝機能異常がそれぞれ4例でした。

Q トラゼンタの安全性・有効性について、データをご紹介いただけますでしょうか。03

重篤な副作用は35例(1.6%)に認められ、2例以上に認められた重篤な副作用は、脳梗塞4例(0.2%)、心筋梗塞、膵癌、死亡がそれぞれ3例(0.1%)、突然死、転倒がそれぞれ2例(0.1%)でした。
死亡の転帰に至った症例は11例に認められ、2例以上に発現が認められた事象は、突然死を含む死亡5例、膵癌3例でした。そのうち1例は突然死と膵癌の2事象が報告されました。

Q トラゼンタの安全性・有効性について、データをご紹介いただけますでしょうか。02

注意すべき副作用については、肝機能障害は17例(0.8%)、血管浮腫、蕁麻疹、発疹、気管支収縮などを含む過敏症は14例(0.6%)、腎機能悪化は5例(0.2%)、低血糖、腸閉塞、膵癌、心不全は各3例(各0.1%)などでした。

Q トラゼンタの安全性・有効性について、データをご紹介いただけますでしょうか。04

続いて有効性について、HbA1cおよび空腹時血糖の推移を説明します。
MMRM解析の結果、いずれにおいても12週目に減少が認められ、26週以降156週もしくは治療終了までHbA1cは7.0%以下を維持し、空腹時血糖は130mg/dL以下を維持しました。

Q トラゼンタの安全性・有効性について、データをご紹介いただけますでしょうか。05

トラゼンタデータ③
Q トラゼンタの心血管アウトカム試験について教えてください。

米国食品医薬品局(FDA)は2008年に製薬企業に対し新規糖尿病治療薬の心血管アウトカム大規模臨床試験の実施を義務付けました。その結果、さまざまな試験が行われています。トラゼンタに関してはCAROLINA試験、CARMELINA試験という2つの試験が実施されました。CAROLINA試験が始まった2009年当時、ADAの高血糖管理アルゴリズムではメトホルミンに追加する2剤目の経口薬としてSU薬が推奨されていました。そのため、CAROLINA試験ではグリメピリドを対照にトラゼンタの心血管イベントへの影響を検証しています。
その後、プラセボを対照にトラゼンタの心血管、腎への影響を検証したCARMELINA試験が追加で実施されました。

Q トラゼンタの心血管アウトカム試験について教えてください

CAROLINA試験
Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?

CAROLINA試験は比較的早期の2型糖尿病患者さんを対象に実施され、フォローアップ期間の中央値は6.3年でした。主要評価項目である3P-MACEについては、優越性の検証では有意差はなく非劣性であることが示されました。

Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?

重要な副次評価項目として設定した血糖コントロールの持続性は、血糖降下療法を安全かつ持続的に行っていく上で、重要なエンドポイントです。
まずHbA1cが7%以下であり、追加治療を必要とせず、2%以上の体重増加を認めず、中等度/重度の低血糖イベントを起こさなかった患者数に関してはトラゼンタ群で多くなっていました。
また、HbA1cが7%以下であり、追加治療を必要とせず、2%以上の体重増加を来さなかった患者数も、やはりトラゼンタ群におきまして、グリメピリド群より患者数が多く認められました。
この重要な副次評価項目より、トラゼンタは持続的かつ安全な血糖コントロールに有用であることが示唆された、といえるのではないでしょうか。

Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?02Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?03Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?04

有害事象はトラゼンタ群 3,023例中2,821例(93.6%)、グリメピリド群3,010例中 2,855例(95.2%)に認められ、主なものは血管浮腫42例(1.9%)、41例(1.9%)、急性膵炎15例(0.5%)、16例(0.5%)などでした。
重篤な有害事象は1,403例 (46.4%)、1,448例(48.1%)、試験中止に至った有害事象は 414 例(13.7%)、448例(14.9%)に認められました。

Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?05

また治験責任医師により報告された低血糖はトラゼンタ群 320例(10.6%)、グリメピリド群1,132例(37.7%)、血糖値≤ 70mg/dLもしくは重症低血糖は195例(6.5%)、927例(30.9%)、重症低血糖は10例(0.3%)、65例(2.2%)、低血糖による入院は2例(0.1%)、27例(0.9%)でした。

Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?06

トラゼンタは比較的早期の2型糖尿病患者さんを対象にしたCAROLINA試験、心血管・腎のイベントリスクの高い患者さんを対象にしたCARMELINA試験と、異なる患者背景に対する心血管アウトカムが検討されている製剤です。

Q 2019年のADAで発表されたCAROLINA試験について詳しく教えていただけますか?07

最後に
門脇先生、ありがとうございました。

トラゼンタは、新規に薬物療法を開始される患者さんをはじめ幅広い2型糖尿病のある方に、1日1回5mgでシンプルな治療が可能な薬剤です。糖尿病治療の選択肢のひとつとして、トラゼンタをご検討いただければ幸いです。

【引用】

  1. 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン2019, p24
    http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-02.pdf(2019年10月16日閲覧)
  2. Kendall DM, et al. Am J Med 2009; 122(suppl): S37-50
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