2型糖尿病の疫学研究からみる早期からの継続した血糖管理の重要性

サイトへ公開: 2023年03月01日 (水)

2型糖尿病の疫学研究からみる早期からの継続した血糖管理の重要性

2型糖尿病のある方を対象とした疫学研究から継続した糖尿病ケアの重要性が示唆されています。早期からの継続した血糖管理の重要性について小田原 雅人 先生にご解説いただきます。ぜひご覧ください。

1. 継続的な糖尿病ケアの重要性

COVID-19の感染拡大は人々の生活様式や医療の提供体制に大きな影響を与え、感染の懸念から医療機関への受診を控える傾向が強まっています。しかし、過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性があり、厚生労働省では適切な医療機関の受診を呼びかけています1)。2型糖尿病のある方においても、COVID-19が流行している時期に受診を控えるということはあるかもしれませんが、主治医と相談してできるだけ定期的な受診と検査を行うことが重要です。
イングランドで実施された2型糖尿病患者におけるCOVID-19パンデミック前後の糖尿病ケアの実施の変化とCOVID-19非関連死との関連を検討した研究では、COVID-19パンデミックにより2型糖尿病患者は、継続的な糖尿病8種ケア(足診断、尿中アルブミン濃度、BMI、血圧、喫煙、コレステロール値、HbA1c値、血清クレアチニン値)を受けられていない状況だったことが報告されています(図1)。さらに、継続的な糖尿病8種ケア受診と死亡率低下との関連が示唆されています(図2)2)
また、COVID-19を罹患した2型糖尿病患者の血糖管理と死亡リスクの関連を検討したコホート研究では、血糖管理が十分な群と比較して、血糖管理が不十分な群では生存率が低下することが示されています3)。したがって、継続的なケアにより血糖管理をしっかりと行うことが重要だと考えます。

継続的な糖尿病ケアの重要性継続的な糖尿病ケアの重要性02

2. 早期からの血糖管理の重要性

血糖管理をしっかりと行うことは糖尿病の合併症を予防する上でも重要です。新規に2型糖尿病と診断された方を対象に、発症早期からの血糖管理によって、糖尿病の合併症が抑制できるかを検討したThe UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) 33試験では、2型糖尿病のある方における厳格な血糖管理が細小血管症発症リスクの低下と関連することが示されました4)。さらに試験終了10年後に合併症発症リスクを検討したUKPDS80試験でも、厳格な血糖管理を行った群で細小血管症発症リスクの低下が認められ、早期からの血糖管理の重要性が示唆されています(図3)5)

早期からの血糖管理の重要性

3. 腎機能別にみた2型糖尿病のある方におけるトラゼンタ®のエビデンス

2型糖尿病の薬物療法では、個々の糖尿病の病態や合併症の状態を考慮した薬剤選択を行い、健康的な食事や運動を実践しながら、継続的に血糖管理目標を達成することが重要です。
日本人2型糖尿病患者を対象として腎機能別にトラゼンタ®の有効性を検討した臨床試験では、腎機能の程度に関わらず0.8から1.0%のHbA1c低下作用が検証されています(図4、図5)6)。本試験における主な有害事象は消化管障害で、G1正常~G2軽度低下群の単独投与で2例、G3a軽度~中等度低下群の単独投与で1例、G3b中等度~G5末期腎不全群の単独投与で3例に認められました(図6)。投与中止に至った有害事象は全体で6例(2.8%)に発現し、めまい、胆嚢炎、肺炎、下痢、突然死、肺炎による死亡がそれぞれ1例ずつでした。死亡例は突然死1例、肺炎による死亡が1例でした。
さらに、トラゼンタ®では心血管系リスクが高い、比較的早期の2型糖尿病患者を対象に、長期の心血管への影響についてグリメピリドを対照として検証したCAROLINA試験が実施され、アジアサブグループ解析もなされています(図7)7)8)。主要評価項目である3P-MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発現率は、全体解析でトラゼンタ®群356例(11.8%)、グリメピリド群362例(12.0%)(ハザート比:0.98、95.47%CI:0.84%~1.14%、非劣性:P<0.001、優越性:P=0.76)であり、非劣性は検証されましたが優越性は検証されませんでした。また、アジアサブグループ解析における3P-MACEの発現率は図8の通りでした。その他の評価項目の最終来院時にHbA1c7.0%以下を達成したレスキュー薬の使用なし、中等度または重度の低血糖のエピソードなし、2%以上の体重増加なしの患者割合は、全体解析でトラゼンタ®群481例(16.0%)、グリメピリド群305例(10.2%)(95%CI:1.44%~1.96%)であり、アジアサブグループ解析では図8の通りでした。全体解析における主な有害事象は、過敏症反応(トラゼンタ®群404例(13.4%)、グリメピリド群346例(11.5%))、血管浮腫(ベースライン時にACE阻害薬またはARB併用)(トラゼンタ®群42例(1.9%)、グリメピリド群41例(1.9%))、類天疱瘡(トラゼンタ®群5例(0.2%))、皮膚病変(トラゼンタ®群9例(0.3%)、グリメピリド群4例(0.1%))、急性膵炎(トラゼンタ®群15例(0.5%)、グリメピリド群16例(0.5%))、慢性膵炎(トラゼンタ®群3例(0.1%))、低血糖(治験責任医師の報告)(トラゼンタ®群320例(10.6%)、グリメピリド群1,132例(37.7%))などでした。投与中止に至った有害事象はトラゼンタ®群414例(13.7%)、グリメピリド群448例(14.9%)であり、重篤な有害事象はトラゼンタ®群1,403例(46.4%)、グリメピリド群1,448例(48.1%)に発現しました。また、アジアサブグループ解析における有害事象は図8の通りでした。投与中止に至った有害事象、重篤な有害事象の内訳は論文には記載がありませんでした。

幅広い2型糖尿病とともに歩む人に対するトラゼンタ®のエビデンス幅広い2型糖尿病とともに歩む人に対するトラゼンタ®のエビデンス幅広い2型糖尿病とともに歩む人に対するトラゼンタ®のエビデンス幅広い2型糖尿病とともに歩む人に対するトラゼンタ®のエビデンス 02幅広い2型糖尿病とともに歩む人に対するトラゼンタ®のエビデンス03

4. まとめ

糖尿病治療の目標は、糖尿病であっても糖尿病でない人と変わらない寿命とQOLを達成することであり、そのためには良好な血糖や体重、血圧などのリスク因子のマネジメントが不可欠となります9)。本稿でお示ししたようなトラゼンタ®のエビデンスが、2型糖尿病の治療における薬剤選択の一助になることを願っています。

References

  1. 厚生労働省. 新型コロナウイルス対策を踏まえた適切な医療機関の受診(上手な医療のかかり方)について. https://kakarikata.mhlw.go.jp/corona/index.html.
  2. Valabhji J, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022; 10: 561-70.
  3. Zhu L, et al. Cell Metab. 2020; 31: 1068-1077.e3.
  4. UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group. Lancet. 1998; 352: 837-53.
  5. Holman RR, et al. N Engl J Med. 2008; 359: 1577-89.
  6. Ito H, et al. Expert Opin Pharmacother. 2015; 16: 289-96.
    (著者に日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社・日本イーライリリー株式会社より講演料を受領している者が含まれる。)
  7. Rosenstock J, et al. JAMA. 2019; 322: 1155-66.
    (本調査はベーリンガーインゲルハイム社およびイーライリリー社の支援で行われました。)
  8. MKadowaki T, et al. Diabetol Int. 2020; 12: 87-100.
    (本調査はベーリンガーインゲルハイム社およびイーライリリー社の支援で行われました。)
  9. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023. 東京 : 文光堂; 2022.

> トラゼンタⓇ電子添文はこちら

ページトップ