製品Q&A トラゼンタのHbA1c(NGSP)および食後2時間血糖値に対する有効性は?

サイトへ公開: 2020年10月22日 (木)

Q :

トラゼンタのHbA1c(NGSP)および食後2時間血糖値に対する有効性は?

A :

トラゼンタ5mg1日1回12週間単独投与により、優れたHbA1c(NGSP)低下作用および食後2時間血糖の改善効果を示しました。

国内第Ⅲ相臨床試験1、 2) 単独投与試験成績(検証試験)

■試験デザイン

日本人の2型糖尿病患者で、グリタゾン系薬剤以外の経口血糖降下薬(1剤または2剤)を中止し、ウォッシュアウトした患者、もしくは経口血糖降下薬による治療を受けていない患者を対象としました。トラゼンタ5mgまたは10mgを1日1回12週間及び26週間投与したときの有効性、安全性、忍容性のプラセボ及びボグリボースとの比較検討及び52週継続投与時の長期安全性の検討を行いました。

試験デザイン

試験デザイン02

トラゼンタ10mg群は国内承認外用量のため、臨床成績から削除した

目  的:血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者に対するトラゼンタの有効性、安全性をプラセボ及びボグリボースと比較検討する。
対  象:食事もしくは運動療法かつ経口血糖降下薬で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者561例
方  法:トラゼンタ5mgまたは10mgを1日1回12週間及び26週間投与したときの有効性、安全性をプラセボ及びボグリボース0.2mg×
3回/日と比較検討した。さらに、52週継続投与時の長期安全性の検討も実施した。※トラゼンタ10mgは国内未承認です。

【有効性の評価項目】
主要評価項目:HbA1cのベースラインからの変化量 副次評価項目:治療目標効果の達成率(HbA1cが7.0%未満及び6.5%未満に低下した患者)、相対的有効性反応の発現(HbA1cが0.5%以上低下した患者)、空腹時血糖値のベースラインからの変化量及びその推移等 その他の評価項目:体重のベースラインからの変化等

【安全性の評価項目】
52週継続投与時の頻度5%以上の有害事象の発現例数、有害事象の発現頻度及び重症度、有害事象による治験中止、身体所見、12誘導心電図、バイタルサイン(血圧、脈拍数)、臨床検査等

解析計画:投与12週後のHbA1cをプラセボ対照、投与26週後のHbA1cをボグリボース対照としてトラゼンタの有効性を検証した。トラゼンタとプラセボ及びトラゼンタとボグリボースの比較は薬剤及び糖尿病の前治療薬の数を固定効果、ベースライン値を共変量としたANCOVAにて実施した。安全性評価項目については記述統計量を算出した。
HbA1c:NGSP

1)林直之ほか: 社内資料(承認時評価資料)検証試験
2)Kawamori R. et al.: Diabetes Obes Metab. 2012; 14(4): 348-57.
(本研究はベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社の支援で行われました。)

■有効性

1)HbA1cのベースラインからの変化量(12週):主要評価項目

投与12週後のHbA1cのベースラインからの変化量は、トラゼンタ5mg群ー0.5%、プラセボ群0.4%でした。トラゼンタ5mg群のプラセボ群に対するHbA1cのベースラインからの調整平均変化量の差はー0.9%と、有意な低下が検証されました(95%CI : ー1.04, ー0.70、p<0.0001、ANCOVA )。

1)HbA1cのベースラインからの変化量(12週):主要評価項目

6. 用法・用量(国内での承認)
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。

■安全性

1)副作用の発現状況(12週)

トラゼンタ5mg群の副作用発現率は9.4%(15/159例)で、主な副作用は腹部膨満3.1%(5例)、便秘3.1%(5例)、鼓腸1.9%(3例)等であり、治験中止に至った副作用は回転性めまいが1例でした。

トラゼンタ10mg群の副作用発現率は8.8%(14/160例)で、主なものは鼓腸3.1%(5例)、便秘1.9%(3例)、腹部不快感1.3%(2例)であり、治験中止に至った副作用は赤血球増加症が1例でした。

プラセボ群の副作用発現率は、10.0%(8/80例)で、主なものは便秘3.8%(3例)、鼓腸1.3%(1例)、高血糖症1.3%(1例)等であり、治験中止に至った副作用は突発難聴が1例、高血糖が1例でした。

各群ともに、死亡例を含む重篤な副作用は報告されませんでした。

2)副作用の発現状況(26週)

トラゼンタ5mg群の副作用発現率は11.3%(18/159例)で、主なものは腹部膨満3.1%(5例)、便秘3.1%(5例)、鼓腸2.5%(4例)等であり、12週以降新たに治験中止に至った副作用は報告されませんでした。

トラゼンタ10mg群の副作用発現率は10.6%(17/160例)で、主なものは鼓腸3.8%(6例)、便秘1.9%(3例)、腹部不快感1.3%(2例)等であり、12週以降新たに治験中止に至った副作用は報告されませんでした。

ボグリボース群の副作用発現率は、18.5%(30/162例)で、主なものは、鼓腸6.2%(10例)、下痢5.6%(9例)、腹部膨満3.7%(6例)等であり、治験中止に至った副作用は、肝障害1例、下痢/悪心1例、食欲減退/疲労1例でした。

各群ともに、死亡例、重篤な副作用は報告されませんでした。

3)副作用の発現状況(52週)

トラゼンタ5mg群の副作用発現率は10.2%(27/266例)で、主なものは腹部膨満1.9%(5例)、便秘1.9%(5例)、鼓腸1.5%(4例)等でした。治験中止に至った副作用は、肝機能異常1例、心室性期外収縮1例であり、重篤な副作用は腹部ヘルニア1例でした。死亡例は報告されませんでした。

トラゼンタ10mg群の副作用発現率は10.6%(29/274例)で、主なものは鼓腸2.6%(7例)、便秘2.2%(6例)、腹部不快感0.7%(2例)等であり、治験中止に至った副作用は、発疹1例でした。死亡例、重篤な副作用は報告されませんでした。

国際共同第Ⅲ相試験(単独投与試験、24週時、海外データ)(検証試験) 4)

■試験デザイン

目的: 未治療または経口血糖降下薬による治療を受けている2型糖尿病患者に対するトラゼンタの有効性と安全性を評価する。
対象: 食事もしくは運動療法かつ経口血糖降下薬で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者で、未治療または経口血糖降下薬(1剤以下。ただしグリタゾン薬を除く。)による治療を受け10週間以上治療を変更していない患者503例
方法: トラゼンタ5mgを1日1回24週間投与したときの有効性、安全性をプラセボと比較検討した。また、ベースライン及び投与24週時のインスリン関連のバイオマーカーを計測した。試験開始前に、経口血糖降下薬治療歴のある患者には6週間のウォッシュア ウトを行い、全患者に対し2週間プラセボを投与した。
評価項目:

【有効性の評価項目】
主要評価項目:HbA1cのベースラインからの調整平均変化量 副次評価項目:治療目標効果の達成率、相対的有効性反応の発現、空腹時血糖値の変化量、食後2時間血糖値の変化量、空腹時バイオマーカー・派生指標、体重の変化等

【安全性の評価項目】
有害事象の発現頻度・重症度、有害事象による治験薬の投与中止、身体所見、12誘導心電図、バイタルサイン、臨床検査等

解析計画: HbA1cのベースラインからの変化量は、薬剤、試験開始前の経口血糖降下薬を固定効果、ベースライン時のHbA1cを共変量とし、有意水準α=0.05(両側)のANCOVAで解析した。食後2時間血糖値の変化量は、薬剤、試験開始前の経口血糖降下薬、ベースライン時のHbA1c、ベースライン時の食後2時間血糖値の変化量を共変量としたANCOVAで解析した。
HbA1c:NGSP

①HbA1cのベースラインからの変化量:主要評価項目
投与24週後のベースラインからの調整平均変化量(標準誤差)はトラゼンタ5mg群ー0.44(0.05)、プラセボ群0.25(0.07 )、p<0.0001(vsプラセボ、ANCOVA )であり、有意な低下が検証されました(FAS(LOCF ))。

国際共同試験第3相試験 主要評価項目

②食後2時間血糖値の変化量:副次評価項目
投与24週後の食後2時間血糖値のベースラインからの調整平均変化量はトラゼンタ5mg群-34.2mg/dL、プラセボ群25.2mg/dLで、その変化量の差はプラセボ群に比較して-57.6mg/dLであり、有意な差が認められました(95%CI : ー82.8, ー34.1、p<0.0001、ANCOVA )。

食後2時間血糖値の調整平均変化量

食後2時間血糖値の調整平均変化量

調整平均変化量(標準誤差)
*** : p<0.0001(vsプラセボ、ANCOVA)
薬剤、試験開始前の経口血糖降下薬、ベースライン時のHbA1c、ベースライン時の食後2時間血糖値の変化量を共変量とした
4Del Prato S. et al.: Diabetes Obes Metab. 2011; 13(3): 258-67.
(本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援で行われました。)

③安全性:副作用の状況
トラゼンタ5mg群の有害事象発現率は、52.4%(176/336例)で、副作用発現率は、5.1%(17例)でした。主な有害事象は、高血糖症 8.6%(29例)、鼻咽頭炎 3.9%(13例)、高血圧症 3.6%(12例)等でした。また、プラセボ群の有害事象発現率は、58.7%(98/167例)で、副作用発現率は、3.6%(6例)でした。主な有害事象は、高血糖症 22.8%(38例)、鼻咽頭炎 4.2%(7例)、上気道感染 3.0%(5例)等でした。治験中止に至った有害事象は、トラゼンタ5mg群 2.4%(4例)、プラセボ群 1.2%(4例)でした。重篤な有害事象は、トラゼンタ5mg群 3.0%、プラセボ群 4.2%でした。薬剤に関連する重篤な有害事象は認められませんでした。本論文中に、治験中止に至った有害事象、重篤な有害事象の詳細な記載、死亡の記載はありませんでした。

ページトップ