11月14日「世界糖尿病デー」に考える 糖尿病におけるスティグマ

サイトへ公開: 2022年10月27日 (木)

近年、糖尿病にまつわるスティグマが世界的なトピックスになっています。糖尿病におけるスティグマおよびアドボカシー活動と長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択の重要性についてご紹介します。ぜひご覧ください。

近年、糖尿病にまつわるスティグマが世界的なトピックスになっています。スティグマとは、一般的に「恥・不信用のしるし」「不名誉な烙印」を意味し、ある特定の属性により、いわれのない差別や偏見の対象となることです。スティグマの対象となりやすい属性として、皮膚疾患、感染症などの外見に特徴が出やすい属性や糖尿病、肥満などの本人の意思や努力次第で克服できると思われがちな属性などがあげられます。日本人の糖尿病のある方を対象に、質問票(kanden institute stigma scale)を用いてスティグマを評価した研究では、糖尿病のある方は、糖尿病のない方と比較してスティグマを強く感じていることが示されています(図11)
また、2型糖尿病のある方が経験するスティグマについて調査した研究では、スティグマの発生源として、メディアや友人、医療従事者などがあり、医療従事者が患者さんのことを思って発した言葉がスティグマとなってしまうことも報告されています2)。話す際の注意点としては、「尊厳」「傾聴」「禁止の禁止」「提案」「深慮」「人生の目標」があげられ、用いる言葉も否定的なニュアンスを含まないよう配慮が必要です(表13)

糖尿病とスティグマ糖尿病とスティグマ02

2.糖尿病にまつわるアドボカシー活動

スティグマは自己肯定感の低下や社会的孤立、治療機会の損失につながるため、糖尿病のある方の権利を守るアドボカシー活動が国内外で注目されています。アドボカシーは「権利擁護」の意味をもち、アドボカシー活動とは、弱い立場の人々の権利を守るために、組織・社会・行政・立法に対して、主張・代弁・提言を行うことを指します。
米国糖尿病協会では、Medicine and Science部門、Health Care部門、Education部門と並んで、Advocacy部門が設置されています。米国ではインスリンの価格が10年間で約2.5倍に高騰し、社会問題となっています。Advocacy部門では、アドボカシーに関連する啓発から政策提言まで包括的に活動し、なかでも糖尿病のある方が適切な治療を継続できるよう医療費の負担軽減に注力しています4)。また日本では、糖尿病にまつわるアドボカシー活動として患者会(友の会)活動や糖尿病サマーキャンプ、過去には日本糖尿病協会が実施したインスリン注射の薬価健保給付を求める10万人署名活動などの実績があり5)、2019年11月には、アドボカシー活動の促進のために日本糖尿病協会・日本糖尿病学会の合同によるアドボカシー委員会が設置されています。

3. 糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択

糖尿病は合併症のリスクを高める疾患であり、血糖管理が上手くいかない場合には治療強化が求められます。そのため、糖尿病の薬物療法では長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択が重要となります。
トラゼンタ®では、国内第Ⅲ相臨床試験により、経口血糖降下薬1剤で血糖コントロールが不十分な日本人2型糖尿病患者に対して追加投与した際の安全性、有効性が検討されています(図2)。本試験の主要評価項目は有害事象の発現率で、トラゼンタ®群の有害事象は82.4%(371例)に認められ、投与中止に至った有害事象は3.6%(16例)、重篤な有害事象の発現率は6.4%(29例)でした(図3)。副次評価項目の投与52週時のHbA1c変化量についてサブグループ解析を行った結果、BMI値25kg/m²未満、25kg/m²以上のいずれにおいても、HbA1cの低下が認められました(図46)7)
さらに、DPP-4阻害薬トラゼンタ®(リナグリプチン)とSGLT2阻害薬ジャディアンス®(エンパグリフロジン)の配合剤であるトラディアンス®配合錠では、トラゼンタ®5mg単剤による治療で血糖コントロール不十分な日本人2型糖尿病患者を対象としたトラゼンタ®からの切り替え試験(1275.19試験)が実施されています(図58)9)。主要評価項目である投与24週後におけるHbA1cのベースラインからの調整平均変化量は、トラゼンタ®5mg+プラセボ群 +0.21%、トラディアンス®配合錠AP(リナグリプチン5mg/エンパグリフロジン10mg)群 -0.93%で、トラディアンス®配合錠AP群のトラゼンタ®5mg+プラセボ群に対する差は-1.14%であり、HbA1cの有意な低下が検証されました(95% CI:-1.36~-0.91%、p<0.0001、MMRM)(図6)。52週間投与における副作用発現割合は、トラディアンス®配合錠AP・BP(リナグリプチン5mg/エンパグリフロジン25mg)全投与群で20.3%(37/182例)、トラゼンタ®5mg+プラセボ追加投与全投与群で7.5%(7/93例)でした。主な副作用は、トラディアンス®配合錠AP・BP全投与群では血中ケトン体増加4.4%(8/182例)等であり、トラゼンタ®5mg+プラセボ追加投与全投与群では無症候性細菌尿3.2%(3/93例)等でした。投与中止に至った副作用として、トラディアンス®配合錠AP群では発疹および頻尿いずれも0.5%(1/182例)、トラゼンタ®5mg+プラセボ追加投与群では低血糖1.1%(1/93例)が認められました。重篤な副作用として、トラディアンス®配合錠BP群で2例(副腎新生物、および肺の悪性新生物)、およびトラディアンス®配合錠AP群で1例(脳出血)が認められ、このうちトラディアンス®配合錠AP群で発現した脳出血の重症度は高度で、死亡に至りました(図68)9)
トラディアンス®配合錠により、糖尿病がある方の血糖管理状態に合わせて、トラゼンタ®、ジャディアンス®から用法を変えることなく治療強化が可能です(図7)。

糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択02糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択03糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択04糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択05糖尿病の長期的な治療シークエンスを考慮した薬物選択06

4.まとめ

糖尿病治療の目標は、糖尿病における合併症の発症・増悪を防ぎ、糖尿病であっても糖尿病でない人と変わらない人生を送ることであり、糖尿病をもつ方が治療に向き合いやすいスティグマのない環境づくりへの配慮が重要です。また、血糖目標達成には長期的な医療従事者のサポートやリスク因子のマネジメントが不可欠です10)。長期の治療シークエンスを見据えた糖尿病治療の選択肢として、配合剤を有するトラゼンタ®をご検討ください。

References

  1. Tanaka N. et al. J Diabetes Investig. 2022. Epub ahead of print.
  2. 加藤明日香. 医療と社会. 2016; 26: 197-206.
  3. 田中永昭. 医学のあゆみ. 2020; 273: 176-80.
  4. American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020; 43(suppl 1): S203-4.
  5. 日本糖尿病協会. 日本糖尿病協会50年史. [https://www.nittokyo.or.jp/uploads/jadec50th.pdf.]
  6. Inagaki N. et al.: Diabetes Obes Metab. 2013; 15 (9): 833-843.
    (著者にベーリンガーインゲルハイム社・イーライリリー社より講演料、コンサルタント料を受領している者が含まれる)
  7. 村井 雅子 ほか: 社内資料(承認時評価資料)国内併用療法長期投与試験.
  8. 須崎恵子ほか:社内資料 エンパグリフロジン/リナグリプチン配合剤国内第Ⅲ相比較・検証試験.
  9. Kawamori R. et al. Diabetes Obes Metab. 2018; 20: 2200-9.
    (本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。)
  10. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023. 東京 : 文光堂; 2022.
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